内容説明
霊長類が長い進化史を通じて採用してきた遊動生活。不快なものには近寄らない、危険であれば逃げてゆくという基本戦略を、人類は約1万年前に放棄する。ヨーロッパ・西アジアや日本列島で、定住化・社会化はなぜ起きたのか。栽培の結果として定住生活を捉える通説はむしろ逆ではないのか。生態人類学の立場から人類史の「革命」の動機とプロセスを緻密に分析する。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
49
世界史の常識では、文明は農耕により生まれたとされる。狩猟採取生活は貧しくて野蛮な時代。小麦(弥生はコメ)によって歴史が開始された、と。しかし縄文はどうだったか。明らかにされてきたのは集落を作り定住していたこと。著者は、定住に画期があるとする。日本は森に覆われた環境だったから、クリやクルミ(と魚)で充分豊かだった。四大文明と同時期に縄文人はクリを植林するだけで生活できた。違うのは多年植物と一年草(種)ということ。縄文の世界史的意味、人類史の発展は栽培でなく定住化にこそあることを説く。しかし、それだけでない。2015/11/17
月をみるもの
15
https://bookmeter.com/reviews/108064782 で紹介されてて、あまりに面白そうだったので即買い。Society 5.0 は、狩猟採集=1.0 農耕(食料生産革命)= 2.0 工業(産業革命)=3.0 電子化(情報革命)=4 の次に来る社会とされているが、実際は遊動社会から定住社会への移行こそが決定的なメジャーバージョンアップで、あとは 地下資源利用=2.1 情報化 2.2 原子力 2.3 くらいなのではないだろうか。。 2022/08/03
樋口佳之
14
今西錦司は、「生物的自然における生物には、博物館の標本のように、単に形態だけの生物はいない。その形態が生活する、あるいは生活する形態が生物である/「安全保障の言語」が、「仕事をする言語」によって圧迫されている/定住の意味を説いた部分だけでなく、示唆に富む論文集だと読みました。縄文時代の不自然さに悩んだ中学生の頃知っていればなあ。2016/09/14
佐倉
12
原著は1986年。現代でグーレバーとウェングロウがが主張するのと同じ視点、遊動/狩猟採集→定住/農耕という新石器革命的な史観に対して批判的な目を向け、「定住が人間の知能の進歩によるもの」「定住が理想的な在り方」という考え方はあくまで手前味噌なものであると論じ、縄文時代における植生や気候変動、食料採取の傾向の例を挙げていく。泉北丘陵の須恵器生産による伐採がクリやクルミといった食料のなる木々が二次林になる流れを見ると「食料生産をする」という意思が農耕や園耕を始めさせるのでは無いのだろうと思わせられる。2026/03/10
ta_chanko
10
農業ではなく、漁業が人類の定住を促した。画期的な視点。確かに、大きくて重い漁具・網・船などを持ち運ぶのは困難。豊かな漁場(海)の前や、サケの遡上場所に定住するのは合理的。その周りで栗などの植物の栽培が始まり、やがて一年で収穫可能な穀物の栽培に発展したのではないか。言われてみれば、縄文時代は狩猟採集の定住生活。一部農耕も始まっていたとされる。「中石器時代」などと言われていたが、まさに漁業による定住の時代だったのかも。2014/01/12




