内容説明
故郷をこよなく愛するとともに、世界各地の多様な風景・風俗を愛したチャペックは多くの旅行記を遺している。本書は故郷チェコスロヴァキアの国内見聞記。子どもの頃から親しみ、童話の舞台にもなった風景や人々の暮らしを丁寧にあたたかく描くなかに、鋭い社会批評が挟まれる名エッセイ。イラスト多数。
目次
1 チェコ国内絵図(わが故郷 イラーセクの地 ほか)
2 プラハめぐり(1)古いプラハ(プラハの起伏 古いプラハのために ほか)
3 プラハめぐり(2)成長するプラハ(プラハっ子の驚き 大きなプラハ ほか)
4 プラハめぐり(3)そこで暮らす人びと(聖十字架の丘 ラファンダ地区 ほか)
5 スロヴァキア絵図(土地の顔 オラヴァ ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Christena
9
チェコスロヴァキアだった時代、1925年前後のエッセイで、この頃のチェコが目覚しく発展していく様子や、プラハの貧民街の酷い貧困、スロヴァキアの農村ののんびりした風景など、イラストを交えて静かに語られている。10年ぐらい前に行ったプラハの街や、スロヴァキアの平原を思い出した。チャペックは実は苦手たけど、この本は読みやすかった。2015/04/11
tsubomi
5
2017.03.13-03.30:1920-30年ごろに書かれた文章なので古いのですが、チェコスロヴァキア域内ついて著者の主観や土地の伝説や社会問題などを混ぜ合わせて巧い具合に読み物にした感じ。文章ごとにかわいいイラストがついていて、特に山でスキーをしているの図の自由闊達さが素敵。基本的に旅行者にちょうどよい内容になっていますが、「警察の手入れ」のような貧困問題について詳述した重い内容や皮肉めいた内容のものも興味深かったです。後半のスロヴァキアの牧歌的風景は今どうなっているのか気になります。2017/03/30
あくび虫
3
聞き慣れない言葉が多くて、ずいぶん入って来ない箇所があります。それでも読んでしまうのは、やはり、視点というか、対応させるものが面白いからでしょう。あるものを見て、自分の中からなにかが湧き出してくる。その「なにか」が、一種独特なのです。ーーなぜだかよく分からないのですが、しばしば真顔で冗談を言われている気持ちになります。困惑するというか、途方にくれるというか。妙に愛嬌のある挿絵が、拍車をかけている気がします。ーーしかし、この絵。彩色して飾っておいたら、どんなに具合がいいでしょう。2016/09/17
cuipa
3
連続チャペック。おおよそ一世紀前、戦と戦の間のプラハ。きっついブラックユーモアでも韜晦しきれない怒りが見えている。この人の、文章もだけれど実は絵が好きだ。巻末にカリカチュアに落とし込んだ自画像が載っている。初めて見た時笑ってしまった。この客観性があるからこそのエッセイである。2015/09/11
マサ
2
著者の旅行記シリーズは独特の視点と表現が面白くて好きだ。本書は正確には旅行記ではないのだろうが、やはりチャペック流のユーモアと鋭い社会風刺がきいていて祖国に対する熱い思いが感じられる内容だった。いつか行ってみたい。2021/03/06