欲望問題 人は差別をなくすためだけに生きるのではない

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欲望問題 人は差別をなくすためだけに生きるのではない

  • 著者名:伏見憲明【著】
  • 価格 ¥968(本体¥880)
  • ポット出版(2015/02発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784780800005

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内容説明

『魔女の息子』で第40回文藝賞を受賞した作家であり、ゲイ・ムーブメントの先駆的役割を果たしてきた著者・伏見憲明が、「人間学アカデミー」(小浜逸郎氏主宰)で語りおろした講義録をもとに大幅に加筆・訂正し書き下ろした渾身の一冊が、この『欲望問題』です。

「痛み」を「正義」とする「差別問題」を、「痛み」も「楽しみ」も等価な「欲望問題」だと読み解き直す<1章──「差別問題」から「欲望問題」へ>。
伏見憲明自身の個人的な体験から生まれた「性別二元制」という捉え方を、15年を経てあらためて自身がその意味を問い、既存のジェンダー論に痛烈な違和を投げかける<2章──ジェンダーフリーの不可解>。

共同性からの自由を目指すのではなく、多様な「欲望問題」を抱える共同性を認め合い、個人の「痛み」を社会に問いかけていくことを不断に繰り返していくという<3章──アイデンティティからの自由 アイデンティティへの自由>。

副題は、「人は差別をなくすためだけに生きるのではない」。「差別がないということ以外にそれを「幸福な状態」と考えうる根拠は何なのか」と著者は問います。実存に根ざした極めて平易な文章でつづられていますが、著者があとがきで書いているようにシンプルな文章で根源的な問いをつきつけた、まさに「パンクロック」な本です。

目次

1章 「差別問題」から「欲望問題」へ(少年愛者の「痛み」;差別というくくりへの違和感;カミングアウトの意味付けの変化 ほか)
2章 ジェンダーフリーの不可解(ヘテロ・システム、「性別二元制」;「中性化」は誤解なのか?;保守派vsジェンダーフリー ほか)
3章 アイデンティティからの自由アイデンティティへの自由(「枠付け」からの自由;アイデンティティの内実の変化;共同性を成り立たせる根拠 ほか)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

寛生

35
【図書館】恐らく初めての伏見さんの本。「命がけで書いたから、命がけで読んでほしい」というエピローグ。大学生向けの授業にいいと思う。丁寧に議論をされていているという印象は持つものの、どこかで畏れのようなものがあるんじゃないかと匂う(笑)。「少年愛者の『痛み』」とういタイトルで始まる本書は、自身の少年愛という欲望と法律・社会との関連性について言及しながらも、「ハッテン場」を「風俗」と呼び(153)、「共同性」という言葉がやたらに繰り返されている。ちょっと臆病すぎる。良書。2014/09/09

みのくま

7
ゲイである著者が性的マイノリティを「差別問題」ではなく「欲望問題」として捉え直そうとする本書。欲望とは不満や痛みや欲求や理想を抱く事であり、社会が各人の欲望をできるだけ実現できるよう調整する事が望ましいと主張する。これが「差別問題」としてしまうと、差別の根源である性差の解消が目的となってしまうきらいがあるのだ。差別の解消は確かに重要ではあるのだが、性差そのものは自然であるためその解消には多大なコストが掛かる。と、要約してみたが本書の最大のポイントは、当事者主義の否定、脱正義によるマイノリティ擁護なのである2019/02/11

西澤 隆

4
未成年同性愛嗜好者が必死に「本当にやったら犯罪だから絶対我慢」と強く自制する告白からはじまる冒頭が衝撃的。まず「ニヤニヤしている異常性癖者の享楽」的ではない例を提示することで読み手の立ち位置を断罪者から「もしかしたら自分も当事者たり得るかも」と調整した上で進める話は「あるべき論」とははなれたかなり身も蓋もない話。ただ、こういう話は身も蓋もない話を検討しなければ意味のある答えを探すことは難しいわけでこういった議論が言葉狩りなく進められるのは大切なことだと思う。評論家的な関わり方から離れるためのきっかけの一冊2023/08/22

まあい

2
2007年の本。セクシュアリティをめぐってネット上で日々行われている不毛な議論は、いまだにこの本の地平を越えられていない。賛否両論あるだろうが、いかに他者を説得して社会を変えるか、と考えるならば重要な一冊となるだろう。はっとさせられるところは多い。2017/01/05

oko1977

2
筆者自身の運動半生を基に、自らの欲望を社会とどう折をつけていくかの問題を述べた本。本書はセクチュアルについてであるが、ネット社会がまずます進み、個人の発言力が高まっていくこれからにあたっては、個人の様々な欲望が社会と衝突していくとはますます増えていくと思う。そういったときに、豊かな社会にしていくための、発言者と社会側の行動指針としても一読にあたる。さすがに一線で長年運動してきただけあって、筆者の意見はバランスがとれていて現実味がある。2008/02/20

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