内容説明
上越国境を縦走する女性4人と男性リーダーのパーティーが遭難死に至る経緯をとらえ、極限状況における女性の虚栄心、嫉妬心などを克明に心理描写した『先導者』。南アルプスを背景に女性をめぐる二人の若者の争いを描く『赤い雪崩』。ヨーロッパ・アルプスの悲運のガイドを描く『嘆きの氷河』など、山でおこる人間ドラマと自然の厳しさを雄渾な文体で綴る全8編を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
goro@the_booby
59
山岳ものの短編8編。各作品を時間掛けて読んでしまったせいか、最初に読んだ物語をすっかり忘れてしまいました。なので後半の「嘆きの氷河」で日本人登山家が巻き込まれるヨーロッパアルプスの登山ガイドの事件と最後の「まぼろしの雷鳥」八ヶ岳で撮られたする雷鳥の写真を巡って展開する話が印象に残った。中央アルプスや八ヶ岳では乱獲のせいで雷鳥は絶滅してしまったと言われてるんですね。また雷鳥に会いたいと思った読後でした。2022/05/02
ichi
25
【図書館本】いつもの山岳小説ではなく、8編の短編小説で、いずれも人間関係しがらみや妬みなどにより殺人事件へ展開した事件や遭難など事件性に焦点を当てた内容でした。2017/01/08
まさ
15
山の人間関係が描かれている他の小説を読んだのでこちらも再読。時代背景が古いにしてもいやはや、しがらみや妬み、欲望のなんともいやらしいことか。人為が及ばない自然の中に身をおくことで、如実にあらわれる部分なのだろう。そのような中に見出される真摯な生き方、信念を自分もしっかりと持ちたい。2018/10/20
まさ
14
昭和30年代から40年代にかけて発表された8編の短編。時代が古いので違和感ばかりでしたが、その分興味深く読むことができました。山行で、いや日頃でもこのようなメンバーと一緒になりたくないなぁ。2016/06/24
mura_ユル活動
14
新田次郎の山岳小説。山が主でなく人が主体に物語りは展開していく。最初の先導者は山が刻々と変化し人の心理を揺さぶり、遭難に至る。他はどちらかと言うと男女間のもつれ、殺人事件あり、山に関しては少し遠くなった印象。登山家善人説があるとすればそれはこの本で完全に覆される。2012/06/24