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内容説明
古事記は、八世紀に編纂された日本最古の書物のひとつである。しかし古事記は突然出現したのではない。縄文・弥生期から連綿と続く、無文字時代の神話がその源にあった。著者は、無文字文化の「生きている神話」「生きている歌垣」が今なお残る中国長江流域の少数民族文化を調査し、神話の成立過程のモデルを大胆に構築。イザナミやヤマトタケルの死、スサノオ伝承、黄泉の国神話、糞尿譚などを古事記の深層から読み直す。
目次
序論 古事記研究の現在(古事記の四つの顔 生きている神話 古事記神話の古層・新層・中間層 昔話と原型的な神話の違い リアリティーある「古代」像を目指して)
第1部 古事記をどう読むか(古事記はどのように研究されてきたか 原型生存型民族の口誦表現モデルで読む)
第2部 古事記を読み解く(臣安万侶言す(「記序」)―激変の時代が突出させた復古精神
天地初めて発けし時―無文字の古層と文字の新層の交錯
イザナミの死―排泄物利用の技術革新
黄泉の国神話―死と折り合いをつける
スサノオ神話―分析を拒絶する混沌
ヤマトタケルの死―古層の死生観で読み直す
サホヒコ・サホヒメ―民族サバイバルから恋愛へ
志毘臣と袁祁命の歌垣―歌垣と政治の交錯
古事記と日本)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マウリツィウス
19
【古事記の歴史系譜】物質主義浸透化における『古事記』定義、書物としての『新約聖書』とラテン語訳聖書ウルガタを比較土台に求める。シェイクスピアと欽定訳聖書を比較論考趣旨に含めるとするのならばオイディプス王の「定義」を再確認出来るのだろうか。日本古典文学における『古事記』とアウグスティヌス『告白』の定義性をも照応、古典主義文学は従来「文書性」を内包している。ラテン語文明史と聖書史、日本古典芸能史をも設定に再認識、ボルヘスの定義した『バベルの図書館』はジェイムズ・ジョイスを再定義予知に求めることも可能とも呼称。2014/02/15
徳浄さん
17
古事記は8世紀初期に太安万侶らによって編纂された。古事記には4っつの顔があり、神話の書、文学の書、神道の書、経典の書をあらわす。この本では古事記の起源について、日本に稲作を伝えたという中国の少数民族イ族の生きた神話や、インドネシアの民俗神話などから、謎の部分を推理している。印象に残ったのは、本居宣長がその成立時の<古代の近代>の人々にとって、アイデンティティ確認の書物であると見抜いていた。という事で、古事記には古代の古代からのものも含み、一緒くたにして都合の良いように国粋主義の方向へと導いていった事だ。2017/03/23
takeapple
4
古事記の神話をアジア(世界)の中で考えるという視点が大事なんだな。2012/02/11
編集兼発行人
2
我国における最古の一文献に関する考察。記録された言葉群を読みや語りではなく歌いや唱えのために用いられたものとして捕捉しながら文字化された時期から更に遥かなる昔の形態を推察してテキストを検証する構成。東亜の辺境各地に現存する少数民族の歌文化に着目して神話の形成段階を整理し呪文性と物語性とのトレードオフ的な関係の下で原型に対して国家の意志が如何様に介入しつつ編纂されたのか詳述。歌垣とは往時の「野外フェス」でありトランシーなグルーヴによる高揚感が場に満ちる祝祭的な時空間にて集団の紐帯が産出されていたものと理解。2015/02/19
takao
1
ふむ2023/03/11