内容説明
「私はこれまでほぼ五十年にわたってヨーロッパ中世史の研究をしてきた」という一文から始まるこの書は、著者が、急逝の日の朝まで朱を入れていた。専門の西洋中世史の研究を超えて、日本史、日本現代社会論にいたるまで、幅広い分野で健筆をふるってきた著者による、文字通り「最後の」書き下ろし。自らの五十年に及ぶ研究をもとに、古今東西を縦横に論じる。西洋と日本、それぞれの近代化について論じる総決算の書。
目次
第1章 西欧社会の特性
第2章 日本の「世間」
第3章 歴史意識の東西
終章 ヨーロッパと日本
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Francis
13
2006年購入しておきながらずっと積読していた本。阿部先生のファンだったのに何で読んでなかったのか。阿部先生すみませんm(__)m。内容は阿部先生のこれまでの研究をコンパクトにまとめたもの。第二章、第三章の日本の世間についての考察はコロナ禍で同町圧力が露わになった今なおも輝きを持っている(私たち日本人にとって大変不幸な事なのだが)日本にキリスト教が普及しない理由が良く分かった。聖書読書会に参加した人の中に世間に囚われているかの如き、こちらのやる気をなくす発言をする人が多くて失望しましたからね(T_T)2022/07/02
ワッピー
7
前半の西欧の差別由来-大宇宙と小宇宙のはざまの話は前にも読んで納得していましたが、日本の差別については、「世間」に由来するもので、丸山真男の古層論、日本誕生神話、自然観などから説き起こしていて、そんなものかと感じるものの、いまだ全貌を理解できていません。はっきりと見えないけれど、新奇な事をしようとした時、何か事件が起きた時、妙に存在感を発揮する「世間」という厄介なものについて、もうちょっと掘り下げてみようと思います。2014/12/20
うえ
6
「大学自体が「世間」であり、研究者も個人ではなく、「世間」の人に過ぎなかった。彼らも「世間」の一人として(一般教育の大綱化)に抵抗することなく、文部省のいうなりになっていったのである。国民の多くは大学でどのような研究がおこなわれているか…全く関心がな」い。「学問を離れてみても、「世間」は日本のジャーナリズムの世界でも大きな力を発揮している。私はある新聞の書評委員を比較的長い間務めたことがあるが、特に文芸関係の委員は何人かの小説家などを自分の「世間」に抱えていて、機会があればその人たちを紹介しようとする」2017/10/18
Rusty
4
日本人は「世間」という共時性(円環的であまり動かない)、同族性の中で生きているから、(欧米流の市民的な)公共性に欠けており歴史に(過去にも未来にも)無頓着というのは共感できる部分もあるのだが、話そこそこにあれやこれやと飛んでいくので雑駁に感じた。親鸞の話とか、自然(動植物)との親和性が高かった明治以前の日本的な観点から西洋諸科学を見直す話とか、物足りない。2016/03/22
Hiro
3
始めの章は難しくて、論理の繋がりが弱く、ヨーロッパにおける個人の成立や差別、賤民のことがただ並列して書かれているようで、読みづらかったが、日本の「世間」の特徴と問題点を述べた第二章に来て的確で痛烈なその批判の鋭さに読んでいるこちらも目が覚めて引き込まれ夢中になって読んだ。日本社会の生きにくさ、駄目さ加減が存分に指摘され痛快でもあり情けなくもある。特に大学教育や子供の人格無視を追及する姿勢は極めて厳しい。本書を最後に71歳で亡くなった著者が本当に惜しまれる。 2025/09/18
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