内容説明
天智天皇、天武天皇の時代を通じ、物部連麻呂は最下級役人だった。壬申の乱では大友皇子の側に立ったこともあり出世は望めなかった。しかし天武の没後、石上の氏族名に変わり、持統天皇、元明天皇の時代には徐々に位は上がっていった。和銅元年(西暦七〇八年)には、臣下の最高位である正二位左大臣にまで上りつめた。なぜ麻呂はそこまで出世できたのか。闇の部分に迫る古代史長編小説。著者絶筆。
感想・レビュー
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榊原 香織
64
遺作。壬申の乱で大友皇子側で、最後までそばにいた人。知らない人過ぎる。 その後出世するのだけれど、武術の達人、て何の武術かよくわからない。2024/03/08
レアル
54
蘇我馬子に敗れた物部氏。没落した身でありながら出世街道を登りつめた、こちら物部(石上)麻呂物語。時代は壬申の乱辺りから始まる。大友側から天武側への転身。そして周りの目。息を殺し自分を殺し虫のようにいきた。しかし野心だけは常に持ち続けた…と、あらゆる手段を持ってのし上がっていく麻呂の姿に圧倒されながら読了。しかし最終的には不比等には勝てなかった。不比等自身の才能か。それとも鎌足の子もしくは天智の落胤とされている血統か…。ずっとこの人物がどのように登りつめたのか興味があったので、面白く読めた。2018/10/10
巨峰
33
黒岩重吾の遺作は、僕も知らなかった地味な古代人が主人公。しかし、この人は当時被差別的な存在であった物部氏族の出でありながら、下級官人から、左大臣まで成り上がる。飛鳥から白鳳時代へ、時代背景も含めて、主人公のあからさまな出世欲も含めてかなり読ませる小説です。2015/01/25
だまし売りNo
31
官吏が出世欲だけという姿勢になることは、麻呂個人の性格に加えて時代も影響している。この時代は日本史では氏族連合政権の大和朝廷から天皇中心の中央集権国家を目指したと説明される。教科書的な説明では物部氏や蘇我氏などの有力豪族が好き勝手に動くよりも、天皇中心の中央集権国家になることが良いことと思ってしまう。しかし、それによって天皇に権限が集中した結果、天皇の好き嫌いで官吏が登用される状況であり、顔色を窺って忖度し、足の引っ張りあいをする公務員組織になってしまった。 2022/09/20
再び読書
20
久々の黒岩氏の歴史小説。期待を裏切らない面白さです。壬申の乱から、天武から文武、元明の中、大友皇子の警護隊長から左大臣まで上り詰めた麻呂の、情報を武器に生き延びた辛抱強さに感心する。天武と持統の大津、草壁皇子を巡る葛藤、また、物部同士の雄君との勢力争いと、藤原不比等の台頭と、時代を繋いだ人物と感じる。あまり、歴史の教科書では語られない部分なので、最後まで面白く読みました。2014/03/09