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内容説明
日本橋上の首都高移設が検討されたり、景観法が制定されるなど、「美しい国」をつくる動きが強まっている。しかし、計画的で新しい街並みが「美」で、雑然として古い街並みが「醜」とは言いきれないであろう。本書は新世代の論客が、秋葉原・渋谷・ソウル・幕張・筑波・上海・ディズニーランド等々を事例とし、さらに平壌への取材旅行から映画・アニメ作品中の未来都市像に至るまで、縦横無尽に「美」とは何かを検証する。写真多数収載。
目次
第1部 二十一世紀の景観論(醜い景観狩り 景観を笑う 日本橋上の首都高速移設を疑う 渋谷のドブ川とソウルの清渓川 テーマパーク化する都市 東京の色彩と広告)
第2部 計画とユートピア(アジア・メガロポリスの建設と破壊―香港・上海・深〓(せん)
押井守の未来都市
幕張はいかにつくられたか
管理空間が生みだす“都市伝説”―ディズニーランド・筑波・都庁舎
ユートピアとしての平壌
過防備都市・再論)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
35
最近の本でも吉見俊哉『東京裏返し』で日本橋を覆う首都高を撤去する提案がなされていた様に、高速道路は醜い表象とされています。他方で景観行政が後押しする景観は、果たしてどこまで美しいといえるのか。価値判断が行われている無意識にこそ注意を向け、試行錯誤の中でつくられた集合に風景=意味を見出すべきだと論じています。景観をアンチ近代の記号ととらえるのは過去の起源を近代的に捏造しようとするナショナリズムと同じ構造なので、著者にどういう思想が批判されているのかが錯綜しており、後半に平壌が出てくるあたり混迷を極めます。2021/02/19
ミツ
12
“醜い”都市とは?そして“美しい”都市とは?現代都市の景観をめぐる12の論集。その切り口はなかなかにバリエーションに富み、日本橋の首都高速移設事業から都市の色彩や広告デザイン、香港、上海、果ては平壌、押井守の未来都市までとかなりユニーク。猥雑だがダイナミズム溢れる美と均整だが平坦な美、二つの美の狭間でどちらに価値を置くこともなくできるだけ公平に紹介しようとする態度には好感が持てる。色彩に関する論考もあるからか写真も巻頭にカラーでいくつか載せられているのもうれしい。著者のほかの著作も読んでみたい。良作。2013/07/08
岡本匠
8
日本橋を覆っている首都高速道路を移設しようとする動きがある。その理由は景観上美しくないからというもの。本書では何が美しくて何が醜いのかについて様々な視点から検証している。美醜に関して明確な基準が存在するかと言えば、そうしたものは無く、どちらかと言えば、声の大きい人の思い込みに操作されてしまう事が多い様だ。「景観を守る」という大義名分については、まず疑ってかかることが必要なのかもしれない。2016/07/16
ネムル
7
日本の景観問題に対して、昔はよかったてな懐古調にならず、度々クンデラを引用しながらアイロニカルにバランスよく問題に付き合っている。まあ日本橋上の首都高をどかせたって、もはやそうした景色でしか知らないもんな。「張り紙大国ニッポン」のぺらぺらとしたい景観についても、コロナ禍のなか渋谷駅上の看板が撤退し、隈研吾の作ったペラペラな雲が一瞬だけお目見えした後とあっては、なお面白い(苦笑)。2021/06/28
てくてく
5
新書の割には論文調で、作者の叙述スタイルに慣れるまで時間がかかったしまった。タイトルにある様に、「美しい都市」とは何なのかを再考察させられる、日本橋の上の高速道路撤去問題、監視カメラによってプライバシーが侵害される一方の過剰な防衛都市問題など、都市建築や都市行政を考える上で参考になる箇所も多かった。2016/06/07