内容説明
巷に跋扈する異界の者たちを呼び寄せる深い闇の世界を、卓抜した筆致で描ききった短篇怪異小説集。秋成壮年の傑作。崇徳院が眠る白峯の御陵を訪ねた西行の前に現れたのは――(「白峯」)ほか、全九編を収載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
106
面白かったです。巷に漂う異界と闇の世界が美しい。江戸時代においては幻想怪奇小説として読まれていたのでしょう。古典ならではの怪談の香りに酔わされます。口語訳より原文のほうがより幻想的な雰囲気を感じました。いつの時代も怪談は人を惹きつけるものだと感じました。妖怪の存在が信じられていた時代ではあれど、人間の業が1番恐ろしいことを見せてきます。怪異から人間心理の深いところを写し取った作品と言えると思いました。2016/09/17
佐島楓
58
「浅茅が宿」が課題になっているため読んだ。まだちょっと内容をつかめていないが、当時の人々の苦しみを等身大で感じ取れた。何回かは精読しよう。2016/02/23
レアル
55
数十年ぶりの再読かな。同じ怪奇モノでも、その話の中に深愛があったり、また切なかったり、逆に面白かったりと、ただ怖いだけでなく妖美的なのがいい。大まかなあらすじが先にあり、そして原文を読むといった本の構成もいい。原文と言っても旧仮名遣い&注釈で読み易いし『雨月物語』は今出回っている怪談噺の下地となっているものも多いので、どこかで聴いたり読んだりした話が描かれている事が多いので親しみも持てる。ここ最近「怪奇モノ」を読んでいる勢いで読んだ。2019/08/19
syaori
45
先日読んだ岡本かの子の作品集に『上田秋成の晩年』が入っていて、『雨月物語』をきちんと読んだことがないことに気付いたので。大まかな筋を知っている有名な話でも、やはり和漢の古典を踏まえた美しい文章で読むと、また違った趣が出てとても惹きつけられます。『仏法僧』『蛇性の婬』などは筋をほぼ知らなかったので夢中で読みました。そのほか、『夢応の鯉魚』の「尾を振り鰭を動かして、心のままに逍遥す」から始まる、滋賀の大湾や比良の高山などを見て泳ぎ回る部分は、縁語なども豊富なうえ自由で楽しい雰囲気があってとても好きでした。2016/11/18
抹茶モナカ
44
怪異小説。どこかで聞いた事のある怪談で、それは、当時に既に古典となっていた怪談からの翻案小説であるからみたい。現代語訳のみ読み、本編は読んでいません。古典の本編は学校で習っていた頃から苦手だったので、読むのは諦めましたが、解説によると名文みたいですね。2015/10/28