内容説明
巷に跋扈する異界の者たちを呼び寄せる深い闇の世界を、卓抜した筆致で描ききった短篇怪異小説集。秋成壮年の傑作。崇徳院が眠る白峯の御陵を訪ねた西行の前に現れたのは――(「白峯」)ほか、全九編を収載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
108
面白かったです。巷に漂う異界と闇の世界が美しい。江戸時代においては幻想怪奇小説として読まれていたのでしょう。古典ならではの怪談の香りに酔わされます。口語訳より原文のほうがより幻想的な雰囲気を感じました。いつの時代も怪談は人を惹きつけるものだと感じました。妖怪の存在が信じられていた時代ではあれど、人間の業が1番恐ろしいことを見せてきます。怪異から人間心理の深いところを写し取った作品と言えると思いました。2016/09/17
ehirano1
107
ホラーの中にわびさびの美しさが漂う幻想と美の融合作品。その中には、愛と後悔の物語や武士道精神と因果応報がコラボした物語もあり、食い入るように読み上げてしまいました。2025/10/11
アルピニア
63
原文、訳文とも全話通して読むのは初めてだが、どの話も既読感を覚えるのは多くの作家がこの作品をもとにした話を紡いでいるからだろう。どの作品も怖さだけでなく哀しさも漂う。特に「青頭巾」では、精進と執着は方向が違うだけなのでは・・と嘆息した。序文で水滸伝や源氏物語を引き合いに出しているが、この物語も長く読み継がれて後世の文化に影響を与えていることは感慨深い。さらに、この文庫では原本の挿画が使われているのも良かった。訳文を読んでから原文を音読すると内容を思い浮かべながら、流麗な言葉の流れを楽しむことができた。→2019/04/08
佐島楓
59
「浅茅が宿」が課題になっているため読んだ。まだちょっと内容をつかめていないが、当時の人々の苦しみを等身大で感じ取れた。何回かは精読しよう。2016/02/23
がらくたどん
58
青柳さんの『オール電化・雨月物語』と併読。前半現代語訳・後半原文併載。たまたま手持ちの「雨月」の解説書がこれだったという理由が大きいが、ちゃんと核心場面の挿絵が引用されているのと主要典拠が紹介されているのが気に入っている。各話の冒頭につく「あらすじ」も短編なので要不要は謎だが、読もうか迷う場合は興をそそられるかも。私は妙に予防線を張りながら挑戦的な秋成の「序」が好き。「本当の話だと信じる人がいるわけないじゃん」と言いつつ解説氏の言うように「原典わかるかね?」という読者の教養への挑戦が薄っすら見えて愉快。2025/04/19
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