内容説明
昭和20年、敗戦。その衝撃は早熟な文学青年の精神を粉々にした。混乱のなか訪れたのは死よりも辛い虚無であった。しかし、立ち上がらなければならない。二度と過(あや)またないために。「世界」を捉える方法の獲取(かくしゅ)に向けて、思考は零(ゼロ)から自力で開始される。純粋に痛切に綴られる詩人の初源の魂の叫び。壮大な思想の出発点を為す極寒に燃える言葉たち。歴史的著作!
目次
第1部 戦後篇(姉の死など 覚書 箴言 宮沢賢治論 無門関研究 短歌 「時祷」詩篇 詩篇)<br/>第2部 戦中篇(少年期 米沢時代 哀しき人々)<br/>過去についての自註
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
11
吉本隆明は少年時のイノセンスな孤独、失墜や闘いの風景を保持したまま老成したたぐいまれなる思想家です。敗戦により最大の信念の基準を失い、世界から疎外され、にも関わらずありとあらゆる党派性を嫌い自らの個を自立しようとした詩人。硬質で、密度の高い、叩いても砕けなさそうなダイアモンドのような言葉だらけです。その中核に、少年期特有の叙情性、フラジャリティがあるのも見逃せません。このような徹底的、世界的『個人』が今の日本にどれだけいるのか。今はあるいは一億総党派時代なのか。吉本は、闘う者に、そのヒントをくれます2011/08/13
哲
3
苦しみもだえる若者は、皆同じ魂を持っているかのよう。戦後のアイデンティティ崩壊から、這いつくばって自分を取り戻そうとする、壮絶な闘いの手記。宮沢賢治に関する章は秀逸で、彼自身も自作の詩で、賢治の影響を強く受けていることがわかる。後に様々な方面に思想を拡大していく彼の根底にあるのはやはり「詩」であり、本質的に彼は詩人だ。「戦中篇」はあまり印象に残っていない。どこかしら呑気ささえ漂っている。「戦後篇」の暗闇のそこで青白く燃えるような文章は凄まじい。バラバラになった彼は、ここで一体どれ程のものを捨てたのだろう。2011/03/04
Hideki.S
2
昔昔の高校生の時に、図書館の棚で一つはみ出た変な形の本があって、手に取っみたら、それがこの本の初版で始めの『姉の死など』『一九四四晩夏』を読んでその溢れる叙情性の文体。一発で虜になってしまった。図書館で借りては返して借りては返してを繰り返す日々。書店には売ってなかった。吉本隆明の著作ではこの『初期ノート』と『源実朝』が大好きです。やっぱり詩人なんですね。大詩人です。2012/03/06
nbnra
0
作者の原点として研究者には必須なのだろうが、個人的には散漫で方向性が定まっていない印象を受けた。たしかに原石としての魅力はあるが。2012/05/26
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