内容説明
小田原の生家の物置小屋で、陋巷の隠者としてもぐらのように暮らしながらも大切に守り通した文学への情念の炎。抹香町の私娼窟へ通い、彼女達に馴染み、哀歓を共にし、白昼の光りには見えない底辺に生きる人間の真実を綴った。60歳にして得た若い妻との生活への純真な喜びが溢れる紀行随筆。宇野浩二、中山義秀、水上勉ら師友をめぐる思い出の記。川崎文学晩年の達成を予感させる好随筆集。
目次
1 梅干の唄(梅干の唄 海の方を向いて 柿の木と山鳩 ほか)
2 多賀の桜(多賀の桜 花びら舞う 仙石原にて ほか)
3 「私小説」の半世紀(「私小説」の半世紀 商売女を主人公に 私と読者 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りー
21
川崎長太郎晩年の徒然語りを集めた随筆集。夏の真っ盛りに部屋にこもってもぐら随筆を読むというのもなかなかオツな体験だった。老境を迎え、衰えゆく身体に倦み、天才ともてはやされたり非業の人生を歩むわけでもない苦境の物書きとして生きてゆく静けさや何でもない旅路の描写が等身大で、これといった山場もないけれども好きだなぁと思う。私小説家の随筆はほぼ私小説と変わらなく面白い。2019/08/15
hitsuji023
7
木山捷平の小説を読んだ時、川本三郎の解説内で名前が上がっていたので、一冊手に取ってみた。木山さんともまた違う味わい。老いたときのエッセイなど派手さはないけれど、細く長く書いた人生を読むことで勇気づけられたり、ホッとすることもあるかと思う。2023/05/01
hirayama46
4
はじめての川崎長太郎。物置小屋で淡々と執筆したり、私娼を買ったり、60代で初婚してハッピーになったりしていた日々を綴ったエッセイ集。ある種の偏屈な部分もありつつも鷹揚なところもあり、書かれた時代がばらばらに収録されている影響もあって、いろいろなところを行ったり来たりしている雰囲気でした。2024/05/10
yoyogi kazuo
3
晩年の随筆集。永井荷風という随筆の中に書かれていることが、後年吉行淳之介との対談の中でも出て来る。川崎は永井荷風の玉ノ井ものは趣味性が強すぎて気に食わないというようだ。吉行も永井荷風と同類ではないか、と厳しい追及に遭っている。消える抹香町という随筆が収録されているのは価値あり。2021/05/08
Asakura Arata
3
なんとなく読み終わってしまった。 この随筆に意味は無いな。人生に意味が無いように。2014/02/06