内容説明
1985年、御巣鷹山で日航機が墜落。その日、北関東新聞の古参記者・悠木は同僚の元クライマー・安西に誘われ、谷川岳に屹立する衝立岩に挑むはずだった。未曾有の事故。全権デスクを命じられ、約束を違えた悠木だが、ひとり出発したはずの安西はなぜか山と無関係の歓楽街で倒れ、意識が戻らない。「下りるために登るんさ」という謎の言葉を残して――。若き日、新聞記者として現場を取材した著者みずからの実体験を昇華しきった、感動あふれる壮大な長編小説。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
-
現実逃避してしまう本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サム・ミイラ
718
当初、日航ジャンボ機の墜落事故を検証するドキュメントと思い込みその凄惨さを想うと恐ろしく読むのを躊躇していた作品。だが実際読んでみるとこの未曾有の事故もニュースソースの一つであり、報道する側のモラルと苦悩葛藤そして使命感と信条の違いゆえ、時に激しくぶつかり合う新聞記者達の群像劇だった。しかし最終目的は同じ。より早く知らぜらる真実を伝える事。日頃から反発し合う者も次第に団結しスクープ獲得に向かう様に胸が熱くなった。魂が震えた。主人公の生き様と報道を通して人間の生と死の尊厳を問う、横山秀夫の最高傑作である。2014/12/06
HIRO1970
690
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️横山さんはお初です。素晴らしい予想を遥かに超えたマスターピースでした。毎日の様に出会いを求めて新しい本に手を伸ばしていますが、体の芯から痺れる名作にはナカナカ出逢えません。本作では名言至言が惜しげも無く次々と出て来て長い年月をかけて著者が構想を練っていたことが解ります。一寸先が見えないのが共通点の戦後最大の事故の報道現場もクリフハングで一歩ずつ歩を進める岩壁も過去と現在のメンタルとフィジカルの限界スレスレの取捨選択をしている時にのみ意識が覚醒し安寧を感じる。ある意味ワーカホリックかな。2016/05/07
抹茶モナカ
616
登り続ける人生があっても良いではないか。中年新聞記者と日航ジャンボ墜落事故の話。人生を下りたい気分だったから、揺さぶられた。2013/08/03
yoshida
519
1985年8月12日、日航機123便が群馬県御巣鷹山に墜落。520人の犠牲者を出した史上最大の航空事故である。北関東新聞社で働く悠木は日航全権デスクに任命される。事故を中心に濃密な人間ドラマが展開される。上司、部下、同期、家族、世界的なスクープ等をめぐり物語は進む。過去の栄光から離れない上司、突き上げる部下。悠木と私の年代が近いので読んでいて熱くなる。「下りるために登る」倒れた安西の言葉の深い意味を知る。望月彩子の投書をめぐるやり取りで自然に涙が出る。濃厚な内容ながらスピード感を持って読める傑作。2015/03/01
どんちん
507
予備知識なく読んだので、あれ?これは警察モノではない?!で、出だしからペースをつかめず、なかなか進まなかった。が、尻上がりにピッチが上がり後半はまさに一気読みであった。それだけ社内の人間模様、悠木親子の距離感、事件事故をとりまく新聞社のスタンス等を今とその時と時間軸を交えながら展開していくストーリーにガッツリ引きこまれてしまった。その先も正直気になるところではあるが、悠木親子に同僚の子が加わり新たな親子関係が生まれるであろうから、現時点では人間関係については、みな丸く治まり良好なエンディングであったかな。2013/12/31