内容説明
〈永遠の戦士 エルリック〉第2巻。この世の彼方の海を旅する不思議な船でエルリックを待っていたのは、エレコーゼ、コルム、ホークムーンだった! ピカレイドの総督にメルニボネの間諜ではないかと疑われ、辺境の海岸へと追いつめられた流浪の皇子エルリック。もはやこれまでかと思われたとき、霧のなかから一隻の船が現われた。「われらとともに航海し、人類の敵と戦ってほしい」・・それがかれを、摩訶不思議な海に展開する異様な冒険へと連れだす始まりとなった……表題長篇『この世の彼方の海』ほか、「〈夢見る都〉」「神々の笑うとき」「歌う城砦」の3中篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
拓也 ◆mOrYeBoQbw
13
ファンタジー。エルリック・サーガ第二巻。各々のエピソードを繋げ長篇に仕上げた一冊。やはり表題作『この世の彼方の海』が特徴的ですね。これはムアコックのホークムーン・サーガのラストシーンにエルリックが居合わせるという所から始まる時間軸を逆行した造りで、物語のテーマである”運命論’を良く表現してる連作です。個人的に好きなのは、”彷徨えるユダヤ人”をモチーフにした『過去への旅(翡翠像の目)』、盟友ムーングラムとの出会いを描く探索劇『神々の笑うとき』の二篇。やはりエルリックにはパラドックスが良く似合います。2015/04/26
鐵太郎
12
さまようエルリック。幻想的な旅が続きます。「この時代がわれらを憎むというのなら、その火に油をそそいでやろう!」・・・なんという虚無的なヒーロー! ところで「歌う城砦」でひとつツッコミあり。トライリームのガレー船と戦う羽目になるのですが、訳語としては三層ガレー船でいいんでしょうけど、文章の中で一本の櫂に三人がとりついて漕ぐと説明されながら、「三列オールのガレー船」と書いているのは訳者の勉強不足か。(笑)2007/07/14
しまっち。
9
エレコーゼ、コルム、ホークムーンも登場。これからの関わりも楽しみである。しかしメルニボネには帰れないだろうと思っていたが、こんな形で帰還、そしてまさかのサイモリルとの結末。悲嘆にくれるエルリック。目的を失って、ますます翻弄されていくのであった。こんなにハツラツ感の全くない悲哀に満ちたヒーローであるが、その世界観の巧みさでどうしようもなく面白いのである。2017/10/10
ホームズ
9
相変わらず作品全体に漂う不思議な雰囲気が好き(笑)ちょっと理解しにくい感じもするけど(笑)『この世の彼方の海』ではエルリックの他、エレコーゼ、コルム、ホークムーンも登場して(笑)こういったつながりが良いですね(笑)『夢見る都』との間にある物語も書いて欲しいですね~(笑)いきなり故郷を攻撃することになっていてちょっとビックリ(笑)2010/06/01
とし
8
エルリック・サーガの2巻。多次元宇宙の狭間にあるかのような不可思議な「海」を舞台にした冒険譚。混沌の神と<黒の魔剣>に導かれ、祖先の王都の呪いを解き、そのことによってさらなる奈落に落ちてゆくエルリック。裏切った従兄を殺すために自分の王国を自らの手で滅亡させ、最愛の婚約者さえその魔剣で殺してしまう。自身の頑迷さによって不幸を呼び込み、その不幸にのたうちながら安息を得るエルリックが、なんとも。「魂の平安」を求めながら、救いがたい、というか、救われるはずもないところが、<混沌の僕(しもべ)>たる性(さが)か。2016/03/19