内容説明
21歳の多喜子は誰にも祝福されない子を産み、全身全霊で慈しむ。罵声を浴びせる両親に背を向け、子を保育園に預けて働きながら1人で育てる決心をする。そしてある男への心身ともに燃え上がる片恋――。保育園の育児日誌を随所に挿入する日常に即したリアリズムと、山を疾走する太古の女を幻視する奔放な詩的イメージが谺し合う中に、野性的で自由な女性像が呈示される著者の初期野心作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
45
主人公の多喜子は、私生児を産み、ひとりで育てることを決意する。 子供の父親には、生まれたことさえ知らせていない。 その育児には、子の父はいっさい関与しない。 不本意ながら母の助けを借りることがあっても、基本的に彼女自身がほぼ独力で育てなければならない。 この辺りの描写を読んで、ひどく居心地が悪くなった。 僕は、ほとんど子育てに参加しなかった。 せいぜい湯浴みをさせたりする程度だ。 そんな僕は、この小説の〈不在の父〉と、どれほどの違いがあっただろうか。/2021/04/11
yumiha
28
私生児を産み育てる多喜子。発表された80年代では、重いテーマだったのではないか?愛していない男の子どもを産むことにこだわる多喜子を理解できなかった。でも嫡出子といえども愛があったかどうかは疑問だから、動物としてインプットされた繁殖衝動だったと理解すればいいのだろうか?多喜子の内的な世界としてのイメージは、白く輝き美しい。そんな多喜子への父と母の言動はむごいけれども、当時の社会の反感・排除や圧力を体現しているのだろう。津島佑子の初期作品なので読み易かったけれども、多喜子の甘さゆるさに共感できなかった。2018/09/06
まあちゃん
16
また一人好きな女流作家さんができた。太宰の娘さんなんですね。この本が出版された1980年、若い女性が結婚せずに男の知らないところで子供を産む、というのは今と比較して珍しいことだったのでは。保育園探しに奮闘し、働きながら子育てをする。同居の暴力モラハラ父。家庭を支えるために縫物の内職をする母。疲れ切った生活でも家事もこなす主人公多喜子。産院の窓からの景色が、光輝くように感じられる。子供が産まれた喜び。産院から帰宅する車窓からの景色も光っている。続く。2021/08/09
66 (Audible オーディブル毎日聴いてます)
7
「なぜオフィスでラブなのか」に取り上げられていた本。オフィスラブ話は少なく、むしろ主人公に子どもができて、子どもがいる生活の奮闘ぶりと慣れていく様子が面白かった。とくに保育園の連絡帳!懐かしや、、。晶が私と同世代のようで、当時の描写も面白かった。図書館の本2019/10/01
sabosashi
6
メキシコとかよそのくにではずいぶんとあることであるが、ニホンでのシングル・マザーというのは例が少ない。 とくに愛の所産ということではなくて子どもを持つ羽目に陥ったとき、ニホンでは女のひとはいかに生きていくか。 もちろんほかのひとには実感しにくいほどの辛苦が待ち受けているにちがいなく、それだけでもかなりの読み物になる。 まずは子どもを抱えた女のひとが社会へ出ていくためのインフラがニホンではあきれるほど乏しい。 しかし最後には、子どもを通じて社会と結び合えるという事実である。 2015/03/31
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