顔のない裸体たち

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顔のない裸体たち

  • 著者名:平野啓一郎【著】
  • 価格 ¥407(本体¥370)
  • 新潮社(2014/10発売)
  • 盛夏を彩る!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~7/28)
  • ポイント 90pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784104260058

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内容説明

赤いロープで縛られ、四つん這いになっている女。顔にはモザイクがかけられているが、間違いなくこれは私――! ごく平凡な女教師・吉田希美子は、出会い系サイトで知り合った男との行為にのめり込んでいく。男の趣味は、自らの性行為の撮影。アパートの駐輪場、大阪城、新幹線のトイレの中……あらゆる場所での淫らな行為がアダルトサイトに投稿されていた。しかし顔にはモザイクがかかっていて、誰にもわからないはずだった。事件が起きるまでは……。芥川賞作家が過激な描写でネット社会の罠を描いた問題作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

キク

51
同じ言葉でも、誰が言ったのかで意味合いが変わる場合がある。例えば、同じ「日本沈没」という一面でも、それが東スポに載っているのか日経なのかで、記事を読む前から別の身構えをすると思う。この作品を書いたのが平野じゃなかったら、「バカな男女の露骨な性描写を延々と書いている下らない作品」として終わらせると思う。でも、書いたのが平野だということで、話しをそこで終わらせることが出来ない。2人の男女の底の浅さが、作者の力量不足によるわけがないと信じられるから。それは現代社会の問題なのだと平野に言われているのかもしれない。2021/09/12

Rie

39
インターネット上でモザイクをかけられた性的な動画。そこに映る男女は出会い系サイトで知り合い、関係が始まった。女性は架空の名前を語ることで分人として自分を捉え幼い頃からの性的な視点とは異なる新たな自分というものに喜びも感じていたのだが…。普段過ごす日常と非日常。界がある様で同じ自分。支配するというと聞こえは悪いが人から求められると断れない、徐々に歪んだ関係が悪い方へ転がり落ちていく怖さを感じた。2019/02/03

*maru*

22
出会い系サイトで知り合った一組の男女。ルポルタージュ風の第三者目線で語られる事によってよりリアリティが増し幼稚さや猥雑さが際立つ内容。ある事件によりモザイクで武装し匿名であった筈の裸体が現在も匿名を守られた群衆の目に晒される。SNSという開放的且つ閉鎖的な空間。関係者と名乗る野次馬達の無責任で薄っぺらい証言が蔓延る社会。そこに身を投じた一人の女性。この作品の性描写には美しさはなくただただ露骨ではしたない印象しか受けないがそれは美化する事なくありのままの欲望を書き上げた平野氏の感性と見事な筆力の賜物だろう。2017/02/05

うーちゃん

20
顔のない裸体=顔だけをモザイクで隠された状態でネット上に出回る、アダルト画像(動画)の女たち。顔や実名を晒し、仕事を持ち家庭や友人を持ち、しかし性的な欲望やプロフィールはしっかりと隠しながら生きる〈現実〉と、顔も実名も不明ののっぺらぼう、しかし自分の奥底に蠢く性を、偽りなく容赦なく晒す〈ネット〉。本当の自分は、どっちだろう。テーマ自体に斬新さはないと思うが、ルポ風&美文という好みの組み合わせに最後まで引っ張られた。さらにあの足を引っ掛けるようなラスト・・すごいセンスだ。性描写多めなので苦手な人はいるかも。2018/08/07

みんく

12
実社会での私とサイバー・スペイスに於ける私。日常を営んでいるときの私と性交に際しているときの私。どっちが本当の自分でどっちが嘘の自分なのか。女の本当の姿を暴き出しそこに自身の存在意義を感じている男と、ふたつの自分をうまく使い分けどちらも充実させていることに悦びや優越感を感じている女。帯には「ここには、あなたのことが書かれているのかもしれない」自宅での私、職場での私、恋人といるときの私。自分の本当の姿とは、どこに属している私なのか?平野さんの『私とは何か「個人」から「分人」へ』を到頭読まなくてはいけないのか2021/02/14

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