内容説明
五大湖のほとりシカゴから西海岸サンタモニカまで全長三千九百キロ、米国の真ん中を横断する「ルート66」。イリノイ、ミズーリなど中西部を貫くこのルート上は、米国内の典型的「保守」層が多く占める地である。進化論も否定するキリスト教原理主義、中絶や同性婚を忌み嫌い、子供は公立学校に通わせず、小さな政府を熱望する……。ニューヨークでもロスでもない、“敬虔で頑迷な彼ら”こそ大国の根幹を成す実像であった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
60
シカゴからカリフォルニアへ抜ける主要道だったルート66をたどりながら、「ハートランド」と呼ばれる中西部の保守を中心にインタビューを核にしてルポする。テーマは教会、進化論論争、州兵、草の根保守から街おこしまで多岐にわたっていて、2005年(子ブッシュ2期目)当時のアメリカ中西部の政治的空気を具体的事例を挙げて伝えている。ただ気になったのが「保守」という言葉の扱い方。おそらくconservativeの訳語として使っているのだろうが、日本語の意味合いとのずれが各所にあるので、その点もう少し丁寧に書かれていれば。2023/05/14
kawa
13
エディ播が歌うルート66は好きですが、こちらはアメリカ保守の中心地であるルート66沿いの中西部(シカゴ〜ロス)の政治的ルポ(期待したロードムービー的なものではない)。かの地の保守とは、キリスト教とアメリカ建国の理念である自主独立、自由に基づく小さな政府を指向するものであるという記述は面白いし、当たり前だけれど、アメリカ=ニューヨーク的イメージを裏切る。もっとも、海外から見る日本のイメージでも、東京=日本としか見られていない気がしないでもない。物を見る時には、多面的に見なくてはいけないと感じさせられる一冊。2016/09/29
swshght
10
アメリカはまだほとんど知られていない。アメリカ外部がアメリカに抱く「アメリカ像」は幻想に近い、とさえ言える。だが、アメリカが自国のイメージを映画などのメディアによって美化していることも確かで、先に述べたアメリカ外部から見た「アメリカ像」はその功罪だろう。保守とリベラルの二元論はいまや成立しない。そこには宗教、文化、人種問題、教育などの問題が介在する。アメリカの姿を的確な論点で浮上させるあたりは良いが、「ルート66」を真面目に記述している感があり、私はやはり外部からの「アメリカ像」に夢とロマンを託したい。2012/09/23
スズツキ
6
コンパクトかつインタビュー多めでさらっと読めるが、かなり良い。ルート66付近に多く存在するアメリカ保守層にスポットをあてている。その思考は日本人の感覚からはかなり異質に感じるが、これもまたアメリカの一面なのだ。この多様性は日本のテンプレ的保守しか知らないと驚きがあるだろう。『日本とフランス 二つの民主主義』と共にもっと読まれていいと思う。2015/09/04
KJ
5
本書が書かれた当時で言えばブッシュ、そして現在で言えばトランプ。彼らを支持している人々は一体どの様な人々なのだろうか。宗教心が強く、自主独立を重んじ、外から見れば排他的にも映るアメリカの「保守」。歴史も起源もバラバラなアメリカ人にとって、建国当時の「アメリカの理念」の下に集う事が自らのアイデンティティと言ってもいい。社会が不安定になればなるほど、人々は自身の拠り所となる物を欲する。そんな時、民衆の立場に立つ思想として存在するのが保守であるが故に多くの人々を惹きつけるのだろう。ルート66はまさにその象徴だ。2016/08/21
-
- 電子書籍
- 週刊エコノミスト2014年6/10号
-
- 電子書籍
- 情熱の忘れ形見【ハーレクイン・セレクト…
-
- 電子書籍
- お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだ…
-
- 電子書籍
- 髪結いの女 - 浮世小路 父娘捕物帖3…