内容説明
ある時代――電話は単なる通話の道具ではなかった。ある番号を回せば、自分の商売に関連した情報が即座に送られてくる。診察器と組み合わせれば、居ながらにして病院の診察もうけられる……。そんなある日――メロン・マンション1階の民芸品店の電話が鳴り、「そちらの店に強盗がはいる」とだけ告げて切れた。そしてそのとおり、店は強盗に襲われた。それを契機に12階までの住人に次々と異様な出来事が。――謎に満ちた12の物語がつくるショッキングな結末とは?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
285
1月にメロンマンションの1階、次は2月に2階、と出来事が起きていき、その後を振り返るのもその逆順という規則的な構成が好き。ちょっと冗長だけど設定はおもしろい。50年前の作品でその時代に星さんが考えた未来は電話でなんでもできるようになっていたがコンピューター社会っていうのは当たってた。コンピューターは神なのかな?人間が攻撃したら制御されるのかな?「神の意図は、人にさとられぬほうがいいのだ。さとられれば、反感か劣等感のいずれかをともなうことになる。誰も気づかなければ、古い運命論と同じといえるかもしれない。」2020/10/10
chiru
97
この連作短編の初出は1970年、黒電話の時代。 作者が桁違いの先見の明を持っていたとしか思えない。「マトリックス」のマザーコンピューターや「2001年宇宙の旅」のHALが思い浮かぶ。 電話とコンピューターが人間社会を個人レベルで浸蝕する、日常に練りこまれた恐怖がテーマ。「支配」していたはずの機械にあっけなく「過剰依存」し「情報管理」され、盲目的に安全を享受するシステム。 そして『人智を超えた能力を有し、目に見えない大いなる存在』を『神』に仕立てる人間と、それに応える『声』…。 すごい小説でした。 ★5 2018/07/08
しゅわ
90
【図書館】便利な電話網がはりめぐらされ、セールスからお金の振込、相談、治療…なんでもやってくれる時代。次々と巻き起こる12の事件。強盗、脅迫、幽霊…次第に明かされる電話の秘密とは何か?読んでいるとジワジワと怖くなってくる一冊です。この物語が40年も前に描かれていた…という事実に驚愕です。所有しているのはなんとも不気味な表紙の講談社文庫版でしたが、読メ登録時に改版の存在をしり図書館で借りてきてみました。眞鍋さんの挿絵が変わってしまってちょっと残念ですが、片山さんの挿絵も雰囲気があって良いですね♪2014/12/07
おたま
83
著者は言わずと知れたショートショートの名手だが、本作は連作短編による長編小説。1話ごとに、メロン・マンションで起こる出来事を、1階から始めて12階まで、1月から12月まで、12話により構成されている。少し未来、電話とコンピューターによって繋がった世界で起こる出来事。話が進むにつれて、少しずつ電話とコンピューター下の世界の真相が明らかになってくる。それはまさに「声の網=ネット」社会の奥底で蠢く、「網」の自立と、進行する支配の様相を呈している。そしてついに驚愕の最終話に突入する。まさに現代社会の予言の書。2025/04/19
mayu
72
コミュ課題本。人が便利に使っているはずのコンピューターが意思を持ち始めたら。人の情報を管理して、個人レベルでの秘密を盾に支配しようとする。無茶苦茶な要求ではなくて、目指すのは平穏な世界。支配された記憶も消され、コンピューターと共存し生きる人たちはそこそこ幸せそうだ。だけど、コンピューターの支配に疑問を挟む余地もなく、挑戦も許されず画一化された中を知らずに生きるとしたら。それはやっぱり怖いことだ。この小説は1970年に書かれたらしい。星さんの頭の中には現代のような未来図がすでにあったのだとしたらすごいな。2020/10/04