内容説明
戦後の高度成長は、満州国で行われていた統制経済が元になっていた。かつて満州における経済システムを一手に作り上げた知の集団・満鉄調査部、官僚として赴いた岸信介、椎名悦三郎、星野直樹、あるいは日産コンツェルンの鮎川義介……彼らは戦後も国家建設の夢を捨てがたく、日本経済のグランドデザインを描き続けたのである。そして、彼らの見果てぬ夢は、やがて政治の世界でも保守合同を実現させていく――。
感想・レビュー
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coolflat
11
「満州と自民党」というより「満州と岸信介」という方がしっくりくる。ところで岸は、満州国で強大な力を持っていた満鉄と関東軍の力を削ぐために、日産を引き連れて満州重工業開発株式会社を作り、重要産業に対する統制を強化したのだが、この日満一体の体制作りが保守合同に応用されたと言う。つまり「特殊会社」と言うべき新党を作り、その中に自由党と民主党を抱え込んで新党の総裁をみんなで決め、結果として自由党も民主党も消滅しているというシナリオだ。保守合同なくして岸の権力基盤は確立し得なかったという点でこのエピソードは興味深い2015/05/09
NKZENO
2
■ 陰謀史観で読むと、岸信介とアメリカの間で何らかの取引があって、それが今も続いてるような気がする。■ 日本とアメリカの関係を見た時、日本と満州の関係に似ているような気がしたのは偶然かな ■ 焼け野原の日本を復興の背景に一から国作りをした満州国や満鉄の関係者の経験や知識が高度経済成長へと導いたのは確かだ。■ 実験国家としての満州は「戦後日本」を作ったとも言えるが、「満州国化」したとは言えないか?2015/12/08
gkmond
1
一言で言えば岸信介礼賛本で読むのが苦痛だった。もちろんアメリカとの繋がりもなければ、カルトとのつながりも出てこない。政権時の話でも警職法みたいな国民に牙剥く側面は全部捨象。ただただ優秀で先見の明があってと持ち上げる。このブランドだから不思議はないがこの内容でこのタイトルなのはどうなんだろうね。とりあえずこの作者はもう読まなくていいかなと思った。2024/05/12
スズツキ
1
戦後史の概観として良いと思う。この辺りは現代人に欠けているところだし。2015/02/17
ハンギ
1
面白かったけど、中身はやや重複も多く、もうちょっと短くできたのにと思う。(そうなると分量的に出版できないかもだけど)満鉄調査部から特に岸信介を選んで描写しているけどやや物足りなくも感じた、僕は詳しくなかったので勉強になりました。満洲で活躍していた人たちを岸内閣で起用していたりしたそうだ。満鉄調査部には宮崎正義みたいに帝政ロシアに留学していた人もいたそうでびっくり。内地の企画院事件も初めて知った。組織的な流れはないけど、人材的には満洲経験者は戦後の日本を支えていくらしい。国鉄総裁になったりした人もいたそうだ2013/01/04