内容説明
戦前、中国や南方の戦線に従軍し、「兵隊さんが好きです」と記して戦意高揚に尽した林芙美子は、敗色濃厚になると「キレイに敗けるしかない」と公言し、たちまち非国民扱いされてしまう。国家が求める「物語」に躍らされた芙美子は、戦後、戦争の実相を知り、戦争に打ちのめされた普通の日本人の悲しみを、ただひたすら書きつづけた――。『放浪記』で知られる作家の後半生をたどる評伝戯曲。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
360
林芙美子の後半生(戦中~戦後)を描いた評伝戯曲。彼女は戦中、従軍作家としてアジア各国を歴訪し、聖戦完遂を鼓吹していた。表題の「太鼓たたいて笛ふいて」は、そうした林の姿を表象している。井上ひさしが彼女を主人公に取り上げたのは、そんな林が大戦末期から戦後にかけて豹変するからである。林は節操がないと言われたようだが、井上はそこにこそ人間らしさを見たのだろう。そんな林を一層に戯画化したのが時流に合わせて変節を極める三木である。本編はまた音楽劇でもあるが、舞台での動きは大きくなく、あくまでも言葉が主体の劇である。 2019/03/21
新地学@児童書病発動中
111
林芙美子の後半生に焦点を当てた戯曲。素晴らしい内容で、読んでいて胸が熱くなった。従軍記者とした戦争に加担してしまったことを、林芙美子は悔いるようになる。そして戦争を経験した一般の日本人の悲しみを身を削るようにして、作品に表現していく。その姿を井上ひさしは愛情をこめて描き出しており、一人の偉大な作家の苦渋の胸の内が手に取るように伝わってきた。2015/03/19
kawa
33
戦前から戦後を通じて大衆女性作家として活躍した林芙美子さんが主人公の戯曲作。戦前は貧乏を売り物にしていると男社会の中で差別を受け、戦中は戦意高揚作家として「太鼓たたいて笛ふいて」のごとく活躍、後に多くの批判を浴び、戦後は量産作家として名作を生みだし前のめりで逝ってしまう彼女の波乱万丈。ユーモアも交えテンポの良い井上節でまとめる。戦中の彼女の転向や、島崎藤村の姪のこま子との交情は果たして実話?の疑問も残るが、次は桐野夏生さんの「ナニカアル」で確認できたら良いかな。(新宿「林芙美子記念館」で見かけて選書)2025/02/08
トムヤムクン
7
大好きな戯曲。戦争に翻弄される林芙美子の半生を描いています。戦争を題材にしているのに、この作品には悪者がでてこない。それがすごいと思う2008/12/04
フカミニハマル
6
★★★ 林芙美子については「放浪記」程度の知識でした。戦中の軍国主義宣伝作家としての活躍から一変、戦後は人々の悲しみのために書いたという、常に時代の物語の中に身を置いた芙美子に、哀しき強さを感じます。2009/10/10
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