内容説明
二十世紀初頭、福井の片田舎から上京してきた秋山徳蔵は努力と才覚とで日本の西洋料理界のトップにまで登りつめる。華族会館、ブラジル公使館、築地精養軒、大正元(一九一二)年、三田東洋軒本店の料理長宮内省の主厨長に就任し、我が国の西洋料理界に大きく貢献した秋山の、料理に対する知識と探求心が伺える、自らが筆をとった貴重な食味エッセイ。料理をみつめる冷徹かつ温かい眼差しはいつまでも新鮮で清々しい。
目次
黄金の箸と黄金の皿
ヨーロッパ庖丁修業
大膳頭 福羽先生
果物の味
天皇のお食事
中国の謎
饗宴にうつる歴史の影
終戦前後覚え書
日本の美味
人生は料理なり
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
dongame6
5
戦前から戦後の四十年を昭和天皇に仕えた料理長が記した本。その内容は食事に関する様々な分野に及んでおり最高級の腕と舌を持った昭和人のエッセイ集として大変面白かった。国の内外の食材や料理についての深い造詣、また宮中での作法やその歴史、料理人としての修業時代の様々なユーモラスなエピソードもあり、五十年前の本とは思えないほど楽しく読めた。戦中戦後の昭和天皇の食生活についても触れており、その内容に深い感銘を覚えた2013/11/10
カタコッタ
4
著者の性格と人柄を感じさせる興味深い1冊。昭和の普段語られることの少ない貴重な事実。さらりと読め、語り上手です。2015/05/13
Crystal.B
1
天皇の料理番の自伝的エッセイ。楽しく読みました。序文が吉川英治で、よき友人だったというところにまずに感服しました。古き良き時代の料理人は、まさに「体育会系」ですが、仕事に対する自負や思いは哲学というべきものを感じたし、大作家とも臆せず尊敬しながらも楽しく付き合っています。昭和天皇が蕎麦やサンマが実は好きだったというのも新鮮でしたが、大正、昭和初期の豪華な宮中晩餐にもビックリでした。ドラマは史実と若干違うようですが、愛妻家の一面も感じられ、「舌」も読んでみたくなりました。2015/05/13
こでまり
1
NHKでドキュメンタリードラマを見て、興味が出たので図書館で借り本。天皇陛下の料理番を40年勤めた方の料理に対する姿勢と情熱のお話。終戦から天皇陛下のお人柄に好物だとか、料理人になるまでの話などが、随分昔に書かれた本だというのに分かり易くて、素直に面白かったです。最後に食事会でのテーブルマナーがとても詳しく箇条書きで書かれていて、フランス料理だけでなくすべての料理に通じるその内容がとても勉強になりました。2013/10/30
Gen Kato
1
情報量が豊富、かつ語り上手です。名著。2013/07/02