内容説明
大阪のある被差別部落では、そこでしか食べられない料理がある。あぶらかす、さいぼし……。一般地区の人々が見向きもしない余り物を食べやすいように工夫した独自の食文化である。その“むら”で生まれ育った著者は、やがて世界各地にある被差別の民が作り上げた食を味わうための旅に出た。フライドチキン、フェジョアーダ、ハリネズミ料理――。単に「おいしい」だけではすまされない“魂の料理”がそこにあった。
目次
第1章 ソウルフード―アメリカ(ハーレムの豚もつ煮;フライドチキンの秘密 ほか)
第2章 奴隷たちの楽園―ブラジル(国民料理は奴隷料理;ダダの笑顔 ほか)
第3章 漂泊民の晩餐―ブルガリア、イラク(ロマの“浄・穢観”;「トマス」「トラハナ」冬の朝食 ほか)
第4章 禁断の牛肉料理―ネパール(カースト制度の国;不可触民サルキ ほか)
第5章 被差別の食卓―日本(団地からの風景;日本版ビーフジャーキー「さいぼし」 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
91
米南部黒人のソウルフード、ブラジル、イラクロマ、ネパール、そして著者の故郷の被差別階層での独特な食事についての雑誌記事での取材をまとめた軽い読み物。ナマズやガンボはわかるが、フライドチキンもソウルフード扱いに著者と同様疑問に思っていたが、白人が捨てていた手羽などを高温のディープフライで柔らかく揚げて黒人たちが食べられるようにしたとあり驚く。大腸と脂を揚げたあぶらかすは食べたことがないのでいつか機会があれば食べたいものだ。ブルガリアロマのハリネズミは…… 良書。2019/01/20
yumiko
74
アメリカ、ブラジル、ブルガリア、イラク、ネパール、日本…世界の被差別部落と呼ばれる地を巡り、貧困と差別の中から生まれたソウル・フードを食べてまとめたルポルタージュ。国は違えどどこかソウル・フードが似通っているのは、部落外の人々が残したものや口にしないないものを如何に美味しく食べるのか、そこから生まれているから。学生時代関西から来た友人の話に驚くくらい無知だった。それなりにいろいろ分かったつもりになった今も、やっぱりそんな気になってただけみたいだ。知らないということに気づかされた一冊。2016/11/15
ann
58
食文化から差別問題を探る。とてもわかりやすい。著者が自分の生い立ちをあからさまにすることで、回りくどい言い方無しに、ストレートに、得なければいけない知識として入ってくる。ただ、これは本当に表面、取っ掛かりに過ぎないことは容易に想像もできる。取っ掛かりでいいから、まず、知ることから。いつも大阪行っても食べ損なう「カスうどん」。次回はぜひ。2016/11/21
GAKU
44
世界の被差別の人が作り上げたソウルフードを求め旅したルポ。1.米国ハーレムのフライドチキン、2.ブラジルのフェジョアーダ、3.ブルガリア、ロマ(ジプシー)のハリネズミ料理、4.ネパール不可触民の牛、5.日本のあぶらかす、さいぼしなどが紹介されています。各国のソウルフードを紹介し、その差別の起源、実態にまで言及しています。著者自身も被差別部落出身ということで、このような差別がいかに無意味かという事を、粛々と訴えかけているのが印象的でした。 2016/02/02
たまきら
43
本人の食体験が語られる冒頭から一気読み。差別を受ける人々が入手できる食べ物は安価だったり廃棄されるようなものであることはどこも一緒だし、労働状況がわかるような高カロリーの料理が多い。「下魚だから」とさんまを食べさせてもらえない殿様は笑い話だけれど、この本を読めてよかった。知っておいた方がこの味は深くなる。芝浦の屠畜場で、労働組合の皆さんに出してもらった煮込みの味を思い出した。食に貴賎なし。昔は安かった牛筋も、「あぶらかす」も、今は人気食品です。2023/07/30