内容説明
史上最強の相撲人・雷電を描いた傑作歴史巨編!
異常気象、凶作、飢餓、疫病の蔓延と、厄災ばかりがうち続いた江戸天明期、後世まで語り継がれる一人の力士が彗星のごとく現れた。巨人のような体躯と野獣のような闘志で豪快に相手を投げ倒していくこの男に、抑圧され続けてきた民衆は未来への希望の光を見た。実在の伝説的相撲取り「雷電」の一生を、緻密な時代考証を踏まえドラマチックに描いて、飯嶋和一の名を世に知らしめた大傑作歴史巨編の文庫版を電子化!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
287
また凄い小説に出合った!実在した伝説の力士、生涯戦績たった10敗(勝率96%!)の雷電為右衛門が、天災や飢饉で瀕死の苦しみが続く貧乏庶民たちの生き抜く支えとなり活躍する話。貧富の差が著しく、行政は全く頼りにならない時代に、雷電の圧倒的な力相撲は、そんな悪鬼羅刹や不幸不平を吹き飛ばす象徴!雷電に化粧廻しを贈り親しくなった助五郎の男気も光る!小説全体に重く漂うのは庶民達の『不条理への怒り』か。末期の哀しさが一層不条理を浮き彫りに。読み手の読みやすさに阿ることをせず、書き手の魂を全力でぶつけたような作品‼️🙇2019/08/10
うりぼう
96
さすが飯嶋和一。読み応えは抜群で、時間がかかる。度重なる天変地異にじっと耐える民。こうした積み重ねの中に市井の人格者は生まれるのだろう。情報がないからこそ、本物が伝わるのか。様々な取り組みの描写が、相撲ファンにはたまらない。先日、元大関大麒麟が亡くなった。大鵬に従い土俵入りで、露払いを務めており、谷風と雷電のよう。雷電は、常に自分に求められていることを意識し、民の幸せのため、相撲人への追悼、強き者の責任を思う。米騒動の喜三郎の義賊ぶりがすごいが、その意図は悲しいかな普通の民には通じない。本紀は本気である。2010/08/18
たいぱぱ
64
飯嶋和一ここにあり!歴史に埋もれた人物を重厚な文章と緻密な構成による物語で鮮やかに現代に蘇らせ、しっかりと僕らの心に刻み込む。江戸中期に活躍し21年間でたった10敗しかしなかった大相撲史上最強力士・雷電為右衛門と金物問屋の鍵屋助五郎の物語。信濃の貧しい農家に産まれながら教養と優しさと強い信念を持った雷電。英雄になっても驕らず地方の貧しい人達に優しさをわけ与える続ける姿や、度重なる火災で疲弊した江戸の人々の希望となる姿には心と目頭が熱くなる。人の持つ優しさと信念、そして希望は幕府といえど屈服させられない。 2023/09/12
kawa
43
江戸大相撲21年間でたった10敗しかしなかった我が郷土出身の名力士・雷電を通して、江戸後期の貧しい庶民の様子や役人の派閥争い等を描く。百姓一揆や江戸の大火事が、如何に庶民に身近なものであったか、いつも通りの濃密な描写と油断できない展開で描かれる秀作だが、主人公・雷電の描写がやや淡泊か?との思いも残る。(砂川・いわた書店で購入)2022/07/12
のびすけ
39
大相撲史上未曾有の最強力士雷電為右衛門の生涯を描く。雷電が頭角を表し始めた頃の江戸相撲は谷風、小野川の時代。当時は拵え相撲が横行し、それによって均衡が保たれていた。雷電は拵え相撲に一切妥協することなく真の勝負を挑み、圧倒的な力を見せ付ける!巨大な筋肉の塊が躍動し、立ち合いの一突き二突きで相手を土俵下まで突き飛ばす。若かりし雷電が谷風に稽古を付けてもらう場面や、大関となって小野川と対戦する場面は身震いするほどの迫力!雷電の物語と並行して描かれる助五郎の物語はやや冗長な印象。重厚な読み応え、圧巻の一冊でした!2020/10/09