内容説明
長男が二歳の段階で軽度自閉症と診断された。医者は「適切な訓練」を受ければ、小学校入学時までに健常児に等しいレベルになると言う。しかし、「適切な訓練」を求めた著者の先には数々の障害が待ち構えていた。「重度重視」の福祉政策、専門医の決定的不足、「特殊学級」を強いる教育関係者、そして、時に「鬼」と化する自分自身の心……。これまで語ることの少なかった自閉症児の父が綴る、渾身の手記。
目次
第1章 「障害児の親」を自覚した同時多発テロの夜
第2章 心の「鬼」と向き合いながら
第3章 民間施設で訓練を開始
第4章 行き場のない子どもたち
第5章 息子の見ている世界が知りたい
第6章 福祉が当てにならない理由
第7章 得たもの、失ったもの
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
43
2005年刊。通信社の記者の子が広汎性発達障害の診断を受け、親子で支援の制度と格闘した記録。 正常でも知的障害でもない狭間にいる「自閉症スペクトラム障害」の子どもたちが福祉行政のなかで置き去りになっている現状、発達支援の専門医は採算の事情で増えにくい課題があることを指摘。2004年に施行された発達障害者支援法は超党派の議員立法で、軽度な障害への取り組みを進める思想があることを記します。心や体にハンディを抱えた人の存在を無関心でもよいので認める余裕がほしいとする主張は2020年の今でも通じるものがあります。2020/08/18
扉のこちら側
32
再読。2014年350冊め。『無関心でもいいから、「そこにいても構わないよ」という余裕のある社会になってほしいのだ。』2014/04/23
扉のこちら側
13
初読。長男が軽度の自閉症と診断された父親の手記。親としての葛藤はもちろん、新聞記者ゆえに行政や医療の課題について深く踏み込んで書かれている。2012/11/17
Asakura Arata
5
発達障害者支援法ができた直後の本。初めての診断では、広汎性発達障害で自閉症ではないと医師が説明し、甘めのMTをしている。混乱している時期だったっけ。2024/10/10
kaeru-kuro
4
筆者の子どもとの歩み、葛藤がひしひしと伝わってきた。 発達障害の専門医の不足についても、改めて考えさせられた。 なかなか診察が受けられない子どもたちがたくさんいる。行政の力でぜひ、なんとかしてほしい。 筆者のお子さんの今後についても、ぜひ知らせてほしい。続編を期待。2011/10/23