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内容説明
聖母マリアやエヴァと並んで、マグダラのマリアは、西洋世界で最もポピュラーな女性である。娼婦であった彼女は、悔悛して、キリストの磔刑、埋葬、復活に立ち会い、「使徒のなかの使徒」と呼ばれた。両極端ともいえる体験をもつため、その後の芸術表現において、多様な解釈や表象を与えられてきた。貞節にして淫ら、美しくてしかも神聖な〈娼婦=聖女〉が辿った数奇な運命を芸術作品から読み解く。図像資料多数収載。
目次
第1章 揺らぐアイデンティティ(福音書のなかのマグダラのマリア 外典のなかのマグダラのマリア 「罪深い女」=マルタの姉妹ベタニアのマリア=マグダラのマリア 隠修士としてのマグダラ 『黄金伝説』のなかのマグダラ)
第2章 マグダラに倣って(イミタティオ・マグダレナエ)(フランチェスコ修道会 ドミニコ修道会 信者会(コンフラッテルニタ)とマグダラ
聖女たちの規範としてのマグダラ
サヴォナローナとマグダラ)
第3章 娼婦たちのアイドル(一四世紀のナポリ 一五世紀のフィレンツェ 16世紀のローマ 17世紀のローマ)
第4章 襤褸をまとったヴィーナス(「この上なく美しいが、またできるだけ涙にくれている」 「何と美しいことか、見なければよかったほどだ」 「たとえ深く傷ついた人でも、なおも美しいということはありうるだろう」 エヴァと聖母マリアのあいだ ジョヴァンニ・バッティスタ・マリーノの詩)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
284
娼婦か聖女か? 古今の画家・彫刻家、作家・詩人が描かずにはいられなかったマグダラのマリアを紹介。数多くの写真が掲載され、分かりやすかった。中でも異能の画家・カラヴァッジョの作品は、強烈な個性で印象深かった。「俗なるものの内にこそ聖なるものが宿る」と言って、教会を挑発した彼ならではの絵。官能の法悦に浸るマグダラのマリアが忘れられない。2022/10/16
優希
58
マグダラのマリアというと娼婦から聖女になったイメージですが、そんな彼女についての数奇な運命を描いています。聖書内の記述の検証をはじめとし、バロック期からルネサンス期の絵画を中心に探っていく感じです。あまり宗教的にはなっておらず、あくまで美術史からの検証になっているのでキリスト教に馴染みのない人にも読みやすい内容になっていると思います。もう少し踏み込んで欲しいというところですが、新書のためこれは妥協するしかないでしょう。多様な変容を持たれるマグダラのマリアの「潜在的多様性」は浮き彫りにされていると思います。2014/11/22
かおりんご
35
マグダラのマリアについて、美術的な観点を中心に、人々の間で娼婦から聖女へどのように変わってきたのかを説明した本。マグダラのマリアは、きっと一般庶民にとって身近な存在だったのだろうな。悔い改めたら救われるというのを体現したのだから。私もまた、そんなマグダラのマリアにあやかりたい一人。時代によって描かれ方が変わるのも面白い。2019/05/16
河瀬瑞穂@トマト教司祭枢機卿@MMM団団長
27
みんな大好きマグダラのマリア。キリスト教に馴染みがあまりない人にとって(含む私)、魅力的だが謎の人物。聖母と同じ名で呼ばれる彼女が「キリスト教」の中でどのように愛され続け、その像を変えてきたかを、絵画を中心とした美術品を例に出しながら解りやすく解説した一冊。興味深く読ませていただきました。2013/10/04
こぽぞう☆
24
聖俗併せ持つ女性マグダラのマリア。その生涯は聖書には少ししか書かれていない上、現在のカトリックの教義ではひとりとされているが何人かの合成かもしれない。マグダラのマリアが何者か?ということより、時代、時代で美術、文学で表現されてきた彼女の変遷の書である。新書としては最大限に図版を取り入れている。2016/12/27