内容説明
妹に対して道ならぬ行為をはたらき、それを悔いてグレていった兄の心の軌跡と、思いがけぬ結末を描く『あんちゃん』。世継ぎのいない武家の習いとして、女であるにもかかわらず男だと偽って育てられた者の悲劇を追った『菊千代抄』。ほかに『思い違い物語』『七日七夜』『ひとでなし』など、人間をつき動かす最も奥深い心理と生理に分け入り、人間関係の不思議さを凝視した秀作8編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
びす男
82
じんとくる話から、腹が痛くなるようなおかしな話まで、様々なタイプが揃っている。めずらしく飽きの来ない短編集だった。中盤に収められた「思い違い物語」は、いい味を出している。最後のシーンなど、読みながらニヤニヤしてしまった。「凌霄花」は、花に思いを託すことの意味を教えてくれる素敵な物語。花の名前をひとつ、覚える。そうすれば、年に一度、あの人を思い出す....。笑いあり涙あり、ハッピーエンドが続いてホッとしているところに、最後の切ない「藪落し」。構成まで工夫されているのを感じた。2017/04/29
nakanaka
69
八篇から成る短編集。特に印象的だったのは「菊千代抄」でした。高貴な家に女として生を受けたにも拘らず、諸事情により男として育てられた女性の話。女性であることを知ることにより絶望し世捨て人同然の暮らしをするものの、その後の希望のある展開には胸を打たれました。その他にも、ユーモアたっぷりな「思い違い物語」や強い絆で結ばれている兄妹を描いた「あんちゃん」など、どれも秀作揃いでした。この手のストーリーを多く手掛ける山本周五郎ですが、読み始めると面白くて止まらなくなるのは何故なんだろう。飽きがこないんだよなぁ。2021/10/31
タツ フカガワ
61
武家物5編、市井物3編の中・短編集。15年ぶりの初読みに近い再読でいちばん印象に残ったのが「菊千代抄」。藩主に待望の第一子が生まれ、菊千代と名付けられた嫡男はすくすくと育っていった15歳のとき、自分が女であることに気づく。以後菊千代の性格は一変する。男への憎悪と恋慕、女になることへの懊悩と葛藤。やがて男として生きると決めた菊千代だが……。昭和25年(1950年)の実験的な設定に驚くとともに、「かあちゃん」「おさん」など女性描写の上手さに定評のある周五郎さんならではの菊千代の心の裡の描写が素晴らしかった。2025/06/04
ちゃいろ子
44
最初の二作品が好き過ぎて。 とある作品を読んで、どこに心を奪われるかというのは、自分をさらけ出すようで、また、薄っぺらい読み方しかできていない気がして物凄く恥ずかしいのですが、そこは仕方ないですね(^_^;) どこまでも人間に対しての目線が愛情深く、どの作品にもそれが表れていて心が震えるのですが。 何とも言えないロマンチックな展開にも、やられたーー!萌えしかない!!と。 きっと、この先も何度も読み返してはほのぼのする自分の様子が目に浮かぶ、そんな短編集でした。 2020/11/08
三平
16
おっちょこちょいの迷走・暴走男の行動に周りが勝手に意味のあることと勘違いをし、かき回される様を描いた『思い違い物語』がお気に入り。山本周五郎はユーモア小説もまたいい。他には『七日七夜』に共感。いくら箸にも棒にも引っかからないな奴だとしてもさ、周りに寄ってたかってダメダメ言われ続けると、ちゃぶ台ひっくり返して泣きわめきたくなるもんだよ。少しぐらい優しくしてくれてもいいじゃないか。そんな心を代弁してくれた作者の気持ちが嬉しかった。2016/07/17
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