内容説明
プロパガンダ切手で占領地を埋め尽くせ! スローガン入り消印で敵の戦意を奪い取れ! 戦うための武器は、なにも銃器や爆弾だけとは限らない。日中、満州実効支配を巡る攻防。日米、対立する「戦争の大義」の応酬。そして誇示される戦果の数々――。満州事変から日本の敗戦まで、様々な歴史の舞台裏で、まさに情報戦のごとく国家の威信をかけ飛び交った切手たち。そこから浮かび上がってくる、もうひとつの昭和戦史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
57
郵便切手のほんの小さな面積に、戦争のからんだ政治情勢や戦況自体が、敏感に反映されているのには驚くが、それを読み取るための予備知識として、歴史的背景を詳しく、正しく理解しておくことが必要だろう。ここに集められた郵便物に貼られた切手、消印、封緘、書き込みなど、すべてが歴史を直接証言していて、戦争の時代の証拠として有効だと思う。平和な時代の郵便には当然そんな緊迫感はない。郵便に激しい変化が現れないことが、平和である証だということだ。著者の『それは終戦からはじまった』を先に読んだが、本書に続いて読むと興味深い。2022/05/06
糜竺(びじく)
24
切手も時代を映し出す鏡の一つなんだなと感じた。2022/10/25
C-biscuit
15
図書館で見つけた、面白そうな本である。内容はタイトルの通りであるが、切手から戦争を読み解いていく本である。切手にこれほどのメッセージが込められているとは知らず、また、国家のメディアとしての役割が大きかったことを知った。切手以外にも絵ハガキや消印が歴史を語ることもあるようで、この本では、残されている手紙やハガキの内容も含め、戦争時の生活や戦況、政府のメッセージが解説されており、非常に興味深い。昭和戦史ということで、日中戦争以降が書かれているが、これほど切手中心に歴史を語ることができるとは思わなかった。良本。2016/05/10
CTC
9
04年新潮新書刊、現在は重版未定状態(古書店で購入)。マス向けであれプライベートなものであれ、人と人を繋ぐメディアがごく限られていた頃には、切手や郵便は今よりずっと重要な意味を持っていた。 本書は先の大戦について、切手の図柄や消印に示されるメッセージ(プロパガンダ)を考察したり、郵便から歴史を読み取るもの。例えば43年10月、フィリピンは独立したが…直後の現地から邦人が出した葉書の宛先には、細かくルビが振られている。現地人の係員にわかるように、という配慮なのだ。独立は形式的、日本語推奨の生きた証拠ですな…2018/04/13
桜子
8
「切手は小さな絵画」と私は捉えています、時に絵画はプロパガンダにもなる。切手のみならず消印にも注目です。満州事変から昭和の戦争の終わりまでが各時代ごとに本書に纏められています。武器ではなく「郵便学」という違った角度から昭和戦史を知りたい方にもお勧めです。