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内容説明
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24歳で近代文学の名作を残して夭逝した天才作家・樋口一葉。恋も実らず、結婚もせず、貧困のうちに病に倒れたといわれてきたその生涯とは? 一葉の人生の軌跡を丹念に追いながら、明治という時代をしたたかに生きたひとりの女性としての一葉を描き出し、その創作の秘密に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みつき
37
瀬戸内先生にかかるとこうも女性の業を深く抉られるものなのかと思わずうなる内容の評伝でした。一葉は当時認められていなかった女性の自立について向き合う大きな情熱を持ち合わせていながらも、女としての「性」までは捨てられず、かと言って本能の赴くままに激しい恋愛に突き進むことができるでもない。葛藤に生きた24年間のように思えました。プライドが高く、まだ若い一葉自身が作った淑女としての型に入りきらない内に秘められた炎を結晶化し、それが小説となって残されているようでした。2013/07/06
神在月
13
とても興味深かった。小説家の手にかかると評伝ってここまで面白くなるのか。巻末の日本文学研究者である前田愛氏との対談も刺激的。学者は内心そうだと思っていても資料が出てこないと言えない。小説家はそんな制約はないから、《状況証拠》だけで大胆に推測する。いわゆる行間を読むというやつだ。一葉は膨大な日記を残しているが、必ずしも日記に真実が書かれているとは限らない。省かれているものもあるだろうし、誰の手によってか破られていたりする箇所もある。小説家の日記は将来活字になることをどうしたって意識するということなのである。2022/10/29
kaoriction@本読み&感想 復活の途上
13
また五千円札だ。先日、群よう子作品で抱いた樋口一葉に対する「そんなに悪い人生でもなかったのではないか」という思いに瀬戸内寂聴は応えてくれている気がした。「私は不幸ではない、哀れまないでほしい」という彼女の誇りにみちた声 、と。やはり、かなしいだけの人生ではなかったのだと。女としても人としても、案外、惹きつける力を持っていたと。負けず嫌いで思いつめたら突飛な行動に出るし、周りにいたら、友達にはなりたくないかもしれないけれど。巻末の前田愛氏とのエッセイが面白かった。一葉記念館に行ってみるかな。五千円札持って。2012/10/26
mawaji
9
塩田・和田両氏による一葉の伝記の決定版を踏まえつつも異論反論を唱えながら小説家の目線で書き綴られる寂聴版一葉論は、例のゴシップ的な内容も含めてとても説得力があって「そうなのかも知んないな」と頷きながら読みました。一葉が小説を書くきっかけになった田辺龍子の父親は日経夕刊連載中の「万波を翔る」の主人公田辺太一だったのにオドロキ。萩の舎の面々に桃水との仲がバレバレなのにそうとは気づかずに桃水のことを口にしまくる一葉はまさに恋する乙女状態だったのですね。明後日は126年前の雪の日、一葉が桃水の家へ訪ねて行った日。2018/02/02
S.hisako
4
明治29年に24歳で夭逝した一葉。寂聴の人生経験に裏打ちされた人間感情の機微を読み取る力と洞察力、その筆致によって一葉の秘密も丸裸か....説得力がある。欠落した日記の頁にも真実が浮かび上がる様だった。半井桃水を想う女心が、昔も今も大差なく痛いほどに生々しい。BS『書く女』二兎社 の黒木華主演の演劇を観て触発されて読んだのだけど、読んでから見たら更に面白かっただろうなと思った。2016/10/23