内容説明
16世紀、太古からの伝説が未だ息づくアマゾン河流域――女人族の〈泉の部族〉は精霊の庇護の下、豊かに暮らしていた。大弓部隊隊長・赤弓は、家族を殺された怨みから宿敵〈オンサの部族〉を倒し、一族に平和をもたらす。その直後、大河を下り、飢えたスペイン人たちが現れた。赤弓は一行を撃退するが、傷を負って取り残された黒髭の男を見た 守護精霊〈森の娘〉は、なぜか掟を破り、彼を部族に迎え入れるよう命じる……。濃密な生命と精霊に満ちた密林に展開する魂の喪失と再生の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りー
26
女性だけの一族「泉の一族」。彼女たちは陰の祭りで他族の男たちを受け入れて生殖を行う。泉の一族は守護精霊「森の娘」に守られており、優れた工芸品や薬草の知識で他部族の尊崇を集めていた。対立するのはオンサの一族。仇敵オンサを全滅させたところから物語はスタート。何故泉の一族に男子が存在しないのか?何故陰の祭りの時に森の娘の嘆きは深くなるのか?謎を解きながら、読者は男性とは何か、女性とは何か、どう在ることが正解なのか…思索に誘われる。女同士の相互扶助システムがあって、精子の確保ができるなら?現代では?さて。2023/04/01
三柴ゆよし
10
16世紀のアマゾン川流域、「森の娘」を守護精霊とする女たちの楽園「泉の部族」を中心とした部族連合は、積年の仇敵「豹の部族」を討伐し、束の間の平和を得ていた。しかし森の向うからやってきたひとりの男の存在が、部族の運命を大きく変えることになる。女人族といえばかつてフェミの象徴ともなったが、本作をそうした文脈で読むことを、わたしはあまり推奨しない。むしろ大文字の歴史と神話的な想像力の結実の成果を存分に堪能すべきだろう。生と性の歓びに満ちた世界をダイナミックに描いた、マジックリアリズムの傑作。2010/12/13
秋良
6
アマゾンの、深い森の湿度が迫ってきそうな濃さ。しかし生まれ変わった思い人が残念すぎて、それに振り回される原住民が可哀想な感じに…。鰐の方がよっぽどかっこいい。2017/11/19
asa.com
5
16世紀アマゾン河流域で女人族〈泉の部族〉の大弓部隊長・赤弓が主人公。ファンタジーと言ってしまうには、とっても濃い作品。主人公の赤弓がとっても魅力的。男女の違い、異文化、生命の謎、自然の調和などいろいろなエッセンスがぎゅっと入ってます。出てくる人物がとっても魅力的。
小葉
5
◎ 歴史とファンタジーがほどよくミックスされたアマゾンの森を堪能することができました。物語の中にちらちらと挟み込まれる史実によって、ちょっと賢くなった気分も味わえます。赤弓が凛々しくて素敵。守り人シリーズのバルサを思わせます。でも若い分迷いも多く、そこが可愛い。2006/10/09