内容説明
城とは裏返しにされた牢獄であり、牢獄とは裏返しにされた城である―著者は、日本へのサド紹介と再評価に尽力するなかで、城と牢獄が象徴する意味を極めて現代的な視点で解き明かす。サド侯爵の思想と、その思想が巻き起こす「事件」を論じた第一章のほか、第二章ではボルヘスやコクトーを、第三章では稲垣足穂、滝口修造など東西の芸術に関する論考を併載する。
目次
城と牢獄
サドの論理
サド侯爵とジャンヌ・テスタル事件
サドとマゾッホ―種村季弘『ザッヘル・マゾッホの世界』を読む
精子派としてのサド
フランス版『サド侯爵夫人』について
惑星の運行のように―ルノー/バロー劇団『サド侯爵夫人』を見て
ラコスト訪問記
ラウラの幻影
ポルノグラフィーをめぐる断章〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
90
澁澤のエッセンスのつまった1冊といえるでしょう。城と牢獄が象徴する世界を突き詰めて、現代的な視点で解き明かすのは澁澤ならではのアプローチだと思います。サドの思想と思想からの事件が論じられているのが興味深いところでした。ボルヘスやコクトー、稲垣足穂などの東西の芸術論からも近親相姦や翻訳についてなどを独自の視点で述べています。全体的に魅惑と禁忌の世界観が漂っているように感じました。2016/09/29
sigismund
3
その過激さゆえに色眼鏡で見られがちなサド侯爵。そんなサドの思想家的な一面を取り上げて論ずる。百科全書派に代表される18世紀哲学を吸収しながらも、創作活動によって突き抜けた論理性で情熱へと至ったサドは18世紀の思潮から完全に切り離され「異端」となる。滔々とサドの内面を掘り下げた評論のほか、ゼノンのパラドクスとボルヘスの思考ゲームめいた評論、魅力的な近親相姦論、ヴィスコンティの映画評など、澁澤のエッセンスが詰め込まれている。2016/03/15
ぐうぐう
3
牢獄に閉じ込められ、身体的自由を拘束されたからこそ、サドの文学者としての才能が開花していくという逆説。牢獄の中で想像力という内的な城を築き上げていくサドへの、澁澤の共感がとても素直に理解できる。2009/02/23
Gimmikc
0
城と牢獄に代表される隔絶された空間は澁澤伝統の特殊空間のアイデアで、常に空間を捉えるキーワードになっていますね。2016/05/27
のなん
0
読むべき本が増えてしまった。2015/01/05