角川文庫<br> 悪魔とプリン嬢

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角川文庫
悪魔とプリン嬢

  • ISBN:9784042750062

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内容説明

「条件さえ整えば、地球上のすべての人間はよろこんで悪をなす」悪霊に取り憑かれた旅人が、山間の田舎町を訪れた。この恐るべき考えを試すために――。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

316
寓意に満ちた小説。物語の構造はすべからく2項対立になっており、一見したところでは極めて単純な構図に見えるのだが、はたしてそのままに受け取っていいものかどうか困惑するところでもある。寓意の中核に存在するのは、やはり「悪」だろうが、物語に用意された2つの結末は、それを裏切るようでもあるからだ。登場人物たちも、その属性で語られる司祭や町長、地主などはことさらにステレオタイプのそれだ。一方、主人公のシャンタール、ベルタ、旅人はそれぞれに一筋縄ではいかない存在である。なんだか、キツネに抓まれたような物語でもあった。2018/05/27

眠る山猫屋

51
コエーリョさんにしては思っていたほど強烈なメッセージがない分、読み易かった。南欧の山間の小さな町に現れた異邦人。彼が孤独な女・シャンタール・プリンに持ちかけたのは、殺人と等価交換で金塊を与えるという提案だった・・・。住人誰か一人を誰かが殺せば良いという提案に、一気に揺れてしまう人々。シャンタール自身も惑うが住人のコンセンサスからしたら、孤独な人物が対象になる。誰にでもいる悪霊と天使がささやく。正義と欲望の天秤。町を見守る老婆と、神父の心の揺れ幅が興味深い作品だった。寓話だが、自分だったら・・・。2021/04/05

*maru*

41
男は言った。「汝、殺すべからず」の戒めを犯してほしい、と。期限は1週間。祈りによって善を、後悔によって悪を生んだ神。では、私たち人類は善の味方として創られたのか。それとも、悪の手先としてか…。今まで自分の中にあった善悪の基準みたいなものに揺らぎが生じた。神ですら様々な葛藤があるのだ。『ピエドラ川のほとりで私は泣いた』『ベロニカは死ぬことにした』そして『悪魔とプリン嬢』で3部作の完結となるようです。ピエドラは未読なのでまずは読まねば。生と死、善と悪。その根底にあるものについてじっくり考えたい。2019/05/07

テツ

28
自らの人生の中で降りかかった一滴の漆黒の悪により全てを失った男は、一体人とは善なのか悪なのか、本質はどちらなのかを知るために、山奥に在る静かで滅びかけた街に入り込む。誰しも心の中で常に正義と悪はせめぎあっている。天使の声も悪魔の声もいつも僕たちをそれぞれの道へと誘う。闇に堕ちることを恐れろ。悪への誘惑に一歩踏み出してしまうとき、恐れて踏み留まれ。常に耳に響く誘惑に、ギリギリで抵抗し続けて踏み留まるんだ。実際に道を踏み外すときに躊躇う理由は何でもいい。とにかく踏み外すな。忘れずにいたいです。2019/05/01

コージー

25
★★★☆☆田舎町に訪れた旅人が、住民の一人を殺せば、一生豊かな生活ができるほどの金塊を譲ろうと提案する話。旅人と住民一人ひとりが、各々の内にある善と悪に耳を傾けながら葛藤するという、人間の生臭ささを描いている。舞台と設定はとてもユニークで興味をそそられたが、個人的には終わり方はあっけない感じを受けた。2022/11/03

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