内容説明
鎌倉の海岸で、学生だった私は一人の男性と出会った。不思議な魅力を持つその人は、“先生”と呼んで慕う私になかなか心を開いてくれず、謎のような言葉で惑わせる。やがてある日、私のもとに分厚い手紙が届いたとき、先生はもはやこの世の人ではなかった。遺された手紙から明らかになる先生の人生の悲劇――それは親友とともに一人の女性に恋をしたときから始まったのだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1104
何度目かの再読。今回は「語り」に注目して読んだ。『こころ』は「先生と遺書」にばかり目を集めがちだが、それはテキスト全体の1/3。下は先生の語りだが、上・中は「私」の語りである。では、私はそもそも誰に向かってこれを語っているのか。その時勢はすべてが終わった"現在"である。先生の奥さんに真相を吐露しているのだともとれるし(この場合は先生の遺言を表面上は裏切ることになる。ただし、先生の真意はまた別だ)、私の次の世代の人々に語っているとも言える。また、この作品にはたくさんの"死"が語られる。⇒2020/05/21
Kircheis
782
★★★★★ 自分の中では死ぬまで絶対に忘れないであろう本。 これに対するアンサーとして、武者小路実篤の「友情」があると思う。2018/01/10
ehirano1
650
この歳になって読み返してみると、心臓を鷲掴みにされるような悲劇的恋愛小説でありながら、そこに時代変遷による価値観の相対化を融合させることで、方丈記をミクロで描いた超高度な作品ではないかと思うに至りました。2024/03/10
ちくわ
619
本=ビジネス書な自分が小説も読むようになり、今回長編を手に取る。そんな初心者なので高尚な感想を述べられず恥じ入るが、せめて素直な思いの丈を。田舎出身、都会の大学、年老いた父、恩師の存在…境遇に類似点が多く感情移入はやや強め。また本書は古典なのに読み易く、美しく、表現が新鮮で、炎天下に冷水を飲むように読み続けられた。初体験だ。内容は自分の過去/現在/近未来の混濁にも思われ、奇妙な感触を覚えた。読了後、題名と内容がこれ程同調した作品の記憶が無い…色褪せない不朽の名作が登録100冊目であった偶然が素直に嬉しい。2024/02/25
Major
603
この作品は「こころ」とする以外に、タイトルの付けようがないのではないか。3部構成だが、どの部から読んでも3つの話は円環するように編まれている。登場人物の一人である「私」が、先生からの手紙を車中で読む段になっては、もはや読み手である「わたし」が「私」に代わって、ストーリーの中に組み込まれていくように仕組まれている。「草枕」が文字面の芸術とすれば、「こころ」は文学的構成の芸術である。2つのコメントに続く2017/08/27




