内容説明
『もののけ姫』のあのシーンには「隠し絵」が埋め込まれている――ナウシカ、ラピュタ、トトロ、千と千尋……日本人なら誰もが観たであろう宮崎駿アニメ。その表層のエンターテインメント性に惑わされるな。全ての作品にはさまざまな「仕掛け」が巧みに隠されている!! 「カオナシ」が表すものは……「ナウシカ」は聖女じゃなくて……「湯婆婆」のあのタマネギ頭は……そして、多くの作品に共通する「母の不在」の意味するものとは――暗号を一つ一つ解読していくと宮崎アニメが真に訴えるものが見えてくる! 本書とともに、宮崎駿が仕掛けた暗号を解読せよ。
目次
第1章 『ミツバチのささやき』と『となりのトトロ』
第2章 欧州史の地層という「隠し絵」
第3章 ファンタジーに「真情」を吹き込む中国思想
第4章 『もののけ姫』と宮沢賢治
第5章 シシ神に投影される神々
第6章 シシ神の森の真実
第7章 水の物語『千と千尋の神隠し』
終章 宮崎アニメの深層
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
48
この本が会社務めの傍らに書かれたということにまず驚く。次いでは著者の関心領域の広さと統合力に。内容的には「深読み」とする感想が多いようだが、私は全面的にではないまでも、ほぼ著者の解釈に賛同する。特に評判の悪い五行説にしてもだ。宮崎駿自身の意図がどうあれ、その根底にある「自然」観は本質的には「自然」との合一をを指向する東洋的なものだ。「非対称」の原罪をも覚悟しつつ。そして、そうした論理からすれば『もののけ姫』を宮崎アニメの思想的な頂点とするのも当然だ。また、宮崎作品における「母性の不在」の指摘も新鮮である。2012/11/10
ひよピパパ
14
宮崎駿作品を、五行思想やケルトといったキーワードを通して解釈したもの。ところどころに興味深い図版が挿入されてあったり、宮崎駿が尊崇して已まない堀田善衞への言及があったりして、楽しく読むことができた。だが、全編を通して単なるイメージの連想、類似性のみを根拠に論理展開しているため、何だか素人くささを禁じ得ぬ一編だった。テクスト論に立つのか、作品論・作家論に立つのか、著者の立つ位置も不明確で、両者の間を行ったり来たりしている。内容が題名にちょっと負けている感じで残念。2020/04/06
tario
14
魔女的要素や五行思想、非対称性、アニミズムなどの小難しく感じる語句で挫折するかなあと思ったけど、いや、面白いです。ちらちらと見え隠れする様々な土地や文明のカミの存在が知れていい。はっちゃけ過ぎな感じもあるけど2013/11/27
放蕩長男
12
宮崎駿が創りだしたアニメ作品は、入口と出口の高さが違います。入口は広くて低く、誰でも入りやすいけれど、出口は高く、そう簡単に進むことができません。他のエンターテイメントと異なり、内部に段差を設けることで、観客を一段上がった人間に変えることができる。宮﨑駿は、そう自負しています。確かにディズニーアニメのような純粋な娯楽作品は、楽しめはしても、観客を高みへ誘うような強いメッセージ性が薄いような気がします。宮崎アニメに隠されている「仕掛け」を見直すことができた一冊でした。2016/07/20
しろ
12
☆8 宮崎アニメに隠された意図や真髄を探る良い本。オマージュされている作品やシーン、さらには神話や思想といったものを挙げていき、そこから何を伝えたかったのかを解説している。もちろん、荒唐無稽であったり偏執的な部分も多々あるが、それもまたよし。文学でもそうだが、読み替えや捉え方は十人十色であるべきで自由だからこそ面白いし、そうできる作品こそ長生きする。そしてそれが序章に述べられる「宮崎駿の考える通俗作品」なんだと思う。そもそも、著者の示す繋がりは面白く、驚きにあふれているので読み物として文句はない。2011/08/10