内容説明
雨の夜、車に飛び込んできて重傷を負った女が、謎めいた言葉を残して病院から失踪した。飲酒運転をしていた内科医の西崎は、院長から、南海の果て、滅亡を予告された御神島の診療所行きを命じられる。そして、第一の殺人が…!? 初期代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
68
〔再読〕沖縄より石垣島より更に南、御神島という架空の孤島を舞台にしたクローズド・サークル。作者初期のシリアス路線の一つ、トラベルミステリーしか読まれていない読者は、全く違う設定に驚く事だろう。本作は文明や民俗、信仰というテーマを、島の慣習や島に生きる人々の思いと供にしっかりと描き込んでいる。事件が起こるのだが、トリックなどよりも孤島という独自の世界に対するサスペンスを感じる。何とも壮大な未知の世界の一端を、偶然に覗いてしまった様なロマンが心に残る。主人公の医者が、好意を持てない人物であった事は残念に思う。2016/10/07
ちーたん
55
★★★☆☆西村京太郎さんの初期の作品。内科医の主人公は酒気帯び運転で事故を起こしてしまい、島の診療所に赴任することになる。島民は穏やかだが、独自の文化と信仰を持っており、独特の風習に目を背ける主人公(私も)。そんな中、同じ船で島を調査に来た教授が何者かによって殺害されてしまう。本土とは連絡が付かないが、島民は全く動じることはない。そうこうしてるうち、事件は立て続けに起こってしまう。犯人はいったい?異文化を感じさせる神秘的な孤島ミステリー!2019/02/13
たんたん(休みます)
44
御神島、素晴らしい自然に囲まれた美しい島。 その島で暮らす人々は他人から見れば奇妙で野蛮に思われるであろう文化、信仰、風俗、慣習を守って静かに生きていた。島の為、神を信じることに幸せを感じていた。 そんな島で起こった連続殺人・連続失踪事件。東京から来た医師は事件に巻き込まれていく… 明るくも秘密めいた島民の中に犯人はいるのか?島の不気味さが事件に深みを増す。 生きるということを考えさせられた作品。衣食住、子孫を残すこと、それがどれほど大事なことか、大変なことか… 主人公を好きになれなかったのが残念。2014/08/29
ふう
13
トラベルミステリーのトの字もまだない笑、西村京太郎初期の代表作(だそうだ)。ミステリとしてより閉ざされた南の島の謎めいた雰囲気を味わう作品(なんと官能的な描写も少しある!)。西村京太郎ってこういう作品も書いてたんだなあ。トラベルミステリー方向に行かなかったらどんな作品残してたんだろう。けどそうでなかったらこんなに長く活躍しなかったような気がするし。まあ結果オーライか?2022/06/22
いづむ
10
かの綾辻行人先生が「愛する西村作品ベスト5」に入れられていたので興味があって読んでみました。石垣島経由で連絡船で渡るしかない架空の「御神島」へ離島医として到着した内科医がまきこまれる連続殺人。島外との連絡もままならない「密室」環境と島の謎めく因習と信仰などミステリー好きを満たす要素をふまえつつ、伝奇小説でもある読み応えある作品でした。綾辻先生が着目されたのにも納得。2022/10/23