文春文庫<br> 富士に死す

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文春文庫
富士に死す

  • 著者名:新田次郎
  • 価格 ¥580(本体¥528)
  • 文藝春秋(2014/11発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167112295

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内容説明

いま、改めて富士山を知る――。著者の「富士山もの」の掉尾を飾る傑作。
霊峰富士に対する民間信仰は昔からあるが、急速に大衆化したのは「富士講」の始まった天正年間である。しかし、大衆化は同時に信仰の俗化、形骸化を招いていった。富士講の荒廃に反発する行者・月行に見出され、のちに富士講中興の祖と称されるまでになった身禄の、感動的な波乱の一代を描いた長篇歴史小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

mura_海竜

96
新田次郎、21冊目。彼の小説で富士は3冊目。江戸時代、富士講。伊兵衛は富士講六世を継ぎ、身禄となり、入定し31日遷化(せんげ)。富士講の実話。もう1人の六世村上光清のきらびやかな富士講との対比。家族の問題・商人で苦労・第5世の月行とのやり取りに多く頁を使っていて、心境の細やかな変化をつかむ。ご利益目的の信者は求めない、最終的には身禄の富士講に人は集まる。「食べるために生きるのか、生きるために食べるのか」「人間のできることには限りがある。欲張ってはならない」。新田次郎では5番内に入るほどよかった。2019/12/07

yoshida

95
霊峰富士への民間信仰「富士講」。その始まりは天正年間。富士講中興の祖である身禄の生涯を描く。富士講は月心と月光の二派に別れた。月心は大衆に教義を説き弟子や信者を増やす。月光は修行に打込む。商人の伊兵衛は月光に命を救われ、次第に富士講に惹かれる。遂に月光の弟子となり、身禄として跡を継ぐ。その過程で婿となった商家を追われ油商となる。生業と修行に打込む身禄を労咳が襲う。月心派は光清が継ぎ大名と呼ばれる程の富貴となるが、教義は乱れた。身禄は乞食と呼ばれるも入定で始めて教義を説き興隆を迎える。知見を得る読書時間。2021/12/14

大阪魂

56
新田さんの「富士山もの」5作の一つ。歴史小説&プチ山岳小説。富士山に参拝に登る「冨士講」。江戸時代はブームなったそうなんやけど、その中興の祖って伊兵衛=6世食行身禄の伝記。5世のとき大衆に迎合、山を稼ぎ場にさせてしもた?月心と、独り修行して地震や噴火を予知した月行に別れ、たまたまの出会いで伊兵衛は月行の弟子に。商人としても成功しつつ、行者としては営利に走らず教義なかった富士講に「誠の心」を柱とした教えを確立、富士で入定(=宗教的自殺)しはったから大ブームに!こんな歴史あったんやねー!他の富士ものもよも!2021/12/14

ちゃま坊

26
江戸時代の富士山信仰のブーム。富士講の行者はまるで天狗のようだ。信仰を餌とし、お山を稼ぎ場と心得る輩の初穂代の奪い合い、山役銭を取り合う人々への富士の怒りが噴火大爆発か。過度に宗教や観光で稼ぐことへの批判とも取れる。狂犬病被害の話が出てきたが、綱吉の生類憐れみの時代背景と関係する。2020/07/22

S.Mori

18
江戸時代に盛んになった富士に対する信仰を描いた本です。あのような美しい姿を持つ山だったら信仰の対象になるのはよく分かります。主人公の生き方が素晴らしいです。伊兵衛は世俗の世界を捨てないで、信仰者としての生き方を続けます。油の販売などで生計を立てました。文学などの芸術や宗教でお金儲けを目指すのは避けるべきでしょう。世俗の世界で鍛えられることで宗教者としても成長できるのだと思います。伊兵衛の最期は、世間的に見たら悲惨なものですが、本人は満足していたのではないかと思います。2020/02/05

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