内容説明
若くして渡米し、84年、殺人罪で終身刑の判決を受け、以来カリフォルニアの刑務所に服役中の郷隼人氏。望郷の思いを短歌に託し、「朝日歌壇」の常連となり「天声人語」で話題となった獄中の歌人の、初めての歌文集。
目次
歌集(十四万二千九百時間 グッピー十二匹 カリフォルニア・雛罌粟 ほか)
選歌百三十五首(夏は来にけり ミレニアム越ゆ)
ソルダッドに黙す(うごめく人影、アパートの縮図 色のない牢獄に、一輪の野の花を活けて ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さかぐち
10
1985年に殺人罪でアメリカで終身刑の判決を受け、現在も服役中の著者による短歌集。31文字のシンプルな言葉の中から、後悔や母への思い、日本への思いなど様々な感情が伝わってくる。過酷な状況の中で正気を保つため、短歌を読み続けているのだそう。辛い気持ちを詠んだもの、植物や囚人仲間との交流を詠んだ優しい印象のものなど様々の短歌が収められているがどれも心に響く。今まで多くの本を読んだが、こんなにも静かに感情を揺さぶられた本は初めてだ。 ■振り向けばずしりと重き服役の 十四万二千九百時間 2017/06/17
犬養三千代
3
2017年8月7日朝日花壇に久々 隼人さんの歌が掲載された。 自分自身との向きあいかたを学びたい。 夕菅も朝顔もまた短命な花ゆえ華麗に可憐に燃ゆる 涼しさはスプリンクラーに濡れながら裸足で歩く夜の獄庭2017/08/10
尾生 信
2
朝日歌壇で郷隼人さんの歌は時々、いや頻繁にこの欄で見かけます。常連投稿者と言っていい。この本によると郷氏は若い日にアメリカに留学し、そこで人を殺してしまい、終身刑で収監されているとの事。「一瞬に人を殺めし罪の手と うた詠むペンを持つ手は同じ」「加害者の己れ以上に何倍も 苦渋味わう双方の家族(ファミリー)」刑に服しながら日本に残した老いた母に送る歌は、胸締め付ける哀しさがあります。罪は罪として、しかし彼の真摯な生きざまを見守りたいです。2009/10/04