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内容説明
サッダーム・フセインを放逐し、イラクに救済者として降り立ったアメリカは、民主主義という福音がこれほど無力とは思っていなかったろう。なぜ戦後復興は泥沼に陥ったのか。宗派や民族の対立、いびつな国土という混乱の種は、イラク誕生時すでに蒔かれていた。一九二一年、暴発した排外運動を封じ込めようと、苦肉の民政移管でこの人工国家を生み出したガートルード・ベルの苦悩を軸に、イラクが背負う困難を照らし出す。
目次
第1章 東方へ!―アラビアのローレンスと「砂漠の女王」
第2章 反英蜂起―ヴァッスムスの暗号帳
第3章 それぞれの聖戦―炎上する中東の回廊
第4章 「千夜一夜の都」陥落―アラブの反乱とミス・ベル少佐
第5章 アワズの遺産―イギリスが埋め込んだ分断のDNA
第6章 イラクという空中庭園―クルド国家の挫折
第7章 「豚の国」―フィルビーの反乱
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
64
著されたのは2004年、アメリカのイラク侵攻が一段落し、本当の困難に突入した頃。まさにその先を予言するような本で、副題-「不可能な国家」の原点-がその内容を言い表している。著者はジャーナリストで、自身が歴史書でもルポでも論文でもないとするように、ベル女史とローレンスの葛藤や苦悩を軸に、イブン・サウードやファイサル、さらにはクルド人のリーダーなどの人物譚から、今から百年前と2004年を二重鏡のように映し出す。好みの分かれそうな文体だが、リズムがよく著者の深い洞察も感じられる。いい意味で期待を裏切られた1冊。2022/02/08
まー
5
歴史書というかガートルードベル、ローレンスが主人公の時代小説のような感じ 途中わかりにくい部分もありましたが全体的には楽しく読ませて頂きました2022/11/06
サアベドラ
3
アラブの反乱から英国委任統治領イラクの成立あたりまでの歴史を、主に「イラク建国の母」と呼ばれた(イラクをクルド、スンナ派アラブ、シーア派アラブの三頭キメラ国家にした張本人)英国女性ガートルード・ベルの活動を軸に描く。当時の西~中央アジアをめぐる列強のパワーゲームに紙幅が多く割かれており、肝心のイラク自体の歴史や内部対立の経緯などはあまり書かれていなくて少々欲求不満。加えて途中でイラン、アフガン、アラビア半島、トルコにまで話が脱線するから余計なんだかなーという気分にさせられる。2012/06/24
紙魚
2
タイトルはイラン建国ですが, 主な内容はイランの近代史というよりイギリスを始めとするヨーロッパ先進国の中東-アジアの覇権をかけた暗闘の歴史といった感じ. 舞台も登場人物ももころころ変わるので, 気を抜くとすぐに何を読んでいたかわからなくなる恐れあり.2018/09/27
まりえ
2
二人のイギリス人を軸にイラクが建国されていく様子を描いている。小説を読んでいる感覚だった。登場人物は、アラビアのロレンスと砂漠の女王と呼ばれたガートルート・ベル。イギリスによって人工的に作られた国家は1921年有力者のみを対象に国民投票をし、表面上「民主主義の国家」として成立する 。しかし、異なる部族、民族の寄せ集めに過ぎない国はもろい。国連等が介入し、国民投票をもって「民主主義国家」とする方法は、今も行われている(アフリカ、カザフスタン等)が、こんな昔からの方法だとは知らなかった。2017/06/01