内容説明
授業時間と学習量を減らしても、「落ちこぼれ」も「不登校」もなくならなかった。なぜか。それは、教育改革が制度論に終始し、学校は勉強するところであり、授業こそが学校の「魂」であることを忘れているからにほかならない。一方、不毛な改革論議に左右されることなく、ひたすら子供たちの学力向上を願い、授業技術の開発と熟練に挑んできた教師たちがいる。彼らの授業に学校を再生させるカギが隠されている。
目次
序章 授業こそ学校の魂
第1章 「仮説、推理、検証」で学ぶ科学の心―仮説実験授業 板倉聖宣
第2章 「目に見える」算数への革命的転換―水道方式 遠山啓
第3章 「書く」「読む」「話す・聞く」で本物の国語力―鍛える国語 野口芳宏
第4章 教科書を教科書通り教えよう―教育技術法則化運動 向山洋一
第5章 類型化、そして反復が起こした奇跡―百ます計算 陰山英男
第6章 「一個のハンバーガーから世界が見える」―「よのなか」科 藤原和博
終章 教育論争の忘れ物
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kaz
4
板倉聖宣、遠山啓、野口芳宏、向山洋一、陰山英男、藤原和博。教育界に名だたる面々をダイジェストに紹介していただいた。彼らの技術は、著書やネットでそれなりに知ってはいたが、その背景や人物については、全く知らなかったので、歴史の人物を勉強するのと同じスタンスで読み進めました。良い所、自分なりに咀嚼して活用できるところは大いに参考にしたいですが、猿真似だけはしたくない。できれば、エッセンス取り入れながら自分なりに加工するのが私好みです。終章は、賛同するところとそうでないところが混在していました。2013/09/02
家主
2
54C 名前は聞いたことのある人たちだが、自分が教員になった頃にはもう過去の人とされていて、詳しく調べたこともなかった。(野口先生以外は)昔の教育の流れや、組合の歴史なども、知らなかったことは多かった。新しいものだけが良いのではないと思う。古いものでも今にも通じるところがあるなら、それは価値あるものだと思う。AI時代が到来しても、100ます計算は授業のウォーミングアップに使えると思う。優れた教師は優れた教育を引き継ぐことができてないというような話に納得。だからこそ、法則化という流れができたのだとわかった。2019/08/26
かつお
2
先人の授業を見れる本。自分はやはり仮説がなんだかしっくりくる。その上、欠点も明るみになった。2015/05/10
レイヒロ
2
「授業技術法則化運動」の中心人物向山洋一氏や、算数教育に革命を起こした「水道方式」提唱の遠山啓氏など、戦後日本教育史に一石を投じてきた名物教師たちの業績を、時に肯定的に、時に批判的に概観していきながら、現代の学力低下問題に鋭く切り込んでいく意欲作。出版されたのは2004年と、ちょうどメディアや世論でゆとり教育が盛んに議論されていた時期である。授業技術の面から学力低下問題を考えるというのは、ありそうでなかった論点だと思う。時折筆者の「保守派」らしい一面が垣間見られるが、新書だけに読みやすくまとめられている。2012/06/30
サラダバー
1
様々な現代日本の教育実践者の紹介をされている本。教育に携わっている人であれば、一度は聞いたことのある人の名前が並んでいる。改めて、どの人がどういった実践をされて、どういう位置づけにあるかを知るに最適な一冊。さらっとなぞる程度の本なので、気になった人は別途で補う必要はある(新書なのでそもそもという話でもあるが…)。2022/12/20