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内容説明
黒船の重い砲声によって切って落とされた維新の幕。その舞台の上では、時勢に翻弄されるアドレサン(adolescent:フランス語で青春期の男(女)子の意味)たちのさまざまな人生が演じられる。久保田宗八郎は旗本の次男坊。ひょんなことから講武所通いの生活を捨て、芝居の立作者に弟子入りする。身なりは町人風に馴染んでいくのだが、己の体内を流れる武家の血はどうしても抜けきらず、その狭間で葛藤しつづける。一方、同じく旗本の次男に生まれた片瀬源之介は、養子先がすんなり決まり順風満帆の生活が約束されたかに思えたが、予期せぬ兄の出奔、また彼自身、徳川家への忠誠から日本初の陸軍へ志願するなど、彼の人生もまた社会の急激な変化に大きく揺さぶられるのである。複雑な時代背景を巧みに織り込みながら、歴史の巨大なうねりに翻弄される二人の若者の生き方を見事に交差させ、青春の鬱屈をいとおしさを込めて描き上げた大作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風が造る景色
3
江戸から東京へ、芝居でも思いもつかない筋立ての幕末の時勢に翻弄される若者たち。『小団次の腕』は圧巻で、芝居の世界に取り込まれました。 間違えて『西南の嵐』を先に読んでしまってから3年、やっとこの作品を読みました。もっともっと大きく評価されてよい作品だと思いますし、自分にとっては、きっとこれから何度か読み直す、長く付き合うことになる作品です。 2013/08/24
kishikan
2
あどれさんとは、フランス語で「青年」という意味らしい。幕末に生きる二人の青年の話。互いに武士の家の次男として生まれるが、武士の精神との葛藤の中で、維新という激流にもまれながら、ちょっとした違いが、大きく生活を変えてしまう。悲しみも、憎しみも喜びも、その時代の生き様を語ってくれる。歌舞伎の企画制作に携わる松井の真骨頂ともいえる作品であろう。話の中ごろに登場する、「馬鹿長」のくだりには、思わず涙してしまいそうだった。2008/07/19
YH
2
幕末を扱った小説は沢山あるけれど、中心となるのが庶民や役者の生活というのが非常に面白かった。揺れ動く時代に、揺れていたのは上だけではなく、当然ながら庶民もだというのが良くわかった。2010/08/23
まりこ
1
幕末の江戸、次男坊の青年の話。へそ曲がりなところもある宗八郎と徳川武士として負け戦に挑んだ源之助。宗八郎は芝居の立作者に弟子入りし、生き抜く。武士を捨てる生き方は難しくとも、芝居など江戸の庶民と交わっていた宗八郎は生き抜く。面白かった。源之助は精一杯だが痛々しい感じ。2014/04/29
なつお
0
時代の波に翻弄されながらも武士としての本分を全うした片瀬源之介、時代の流れに巻き込まれまいと抗って活路を見出した久保田宗八郎。黒船来航から明治維新までの徳川幕府末期を舞台に、歴史が個人の生き様に落とす光と影を描いた長編。家督を継げない旗本の次男という立場にある両者は、それぞれの兄を反面教師として自分らしい生き方を模索する。源之介は歴史という舞台の上に立つ役者、宗八郎はそれを眺める観客。2人が対照的な結末を迎えるのは必然だったのだろう。歴史が個人に及ぼす影響力の深さを思い、歴史を刻んでいくことの重みを感じた2021/09/09
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