内容説明
愛に破れた女は幸せに背を向けて生きるすべをおぼえるのか??何不自由なく育ったシーリアは、結婚に破れ、絶望の淵に沈み込んだ。幼い娘を抱えて生きなければならなくなった彼女は、なにゆえ愛を避け、ひとりで歩もうとするのか? 女の愛の哀しさを絶妙に描く、クリスティーの「愛の小説」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
47
メアリ・ウェストマコット名義作品。主人公シーリアの向こうにクリスティーが透けて見えるような気がした。たとえば幼児期や少女期のシーリアの遊びの描写は、とても生き生きしていて、特に想像上の人物を作りだして物語を楽しんでいる姿は、クリスティーの思い出そのものではないか?と深読みしてしまった。また、実母が亡くなった時期に夫ダーモットが恋人を作って家を出て行った場面も、失踪前のクリスティーが追い込まれた状況そのものだと思う。そんな自分を客観的に第三者の目で見つめ直し乗り越えるために書かざるを得なかった作品だと思う。2022/01/28
優希
45
切なかったです。内気なシーリアの恋の物語。婚約者がいながらも、婚約を破棄してまでダーモットの元へ走るのが情熱的に感じました。しかし、夢見がちなシーモアと現実主義のダーモットがうまくいくわけがないですよね。段々亀裂が入っていくのが辛かったです。愛に敗れる孤独が刺さる作品でした。2024/01/08
花乃雪音
26
メアリ・ウェストマコット名義で書かれたアガサ・クリスティー自身がモデルと考えられる主人公シーリアの半生を描かれている。シーリアの魅力がわからなかったため、なぜ彼女がもてるのか理解できず、ただ読み進めるだけだったがシーリアが妊娠してから急に面白くなったので、ここから先を書くための小説なのだとわかった。2020/11/30
とも
20
クリスティーの通常作品。ロマンスものに分類されているがロマンスは味つけ程度。ラスト付近のあなたも同じなのね…という箇所にハッとさせられた。主人公はクリスティー自身が投影されたキャラクターなんだろうなあ。2025/03/28
Tanaka9999
19
未完の肖像。ミステリーではなく、ロマンス小説。解説や他の人の感想を見ていると、作者のクリスティと重ねてみることができるとのこと。私はなんとなくそのような見方がしなくて(できなくて)、当時の女性と半生記として。社交とか女性の結婚相手の選び方とか結構よくある話なんだろうなぁ、と。2020/03/05