内容説明
末期癌に冒された妻の最後の願いとは……。妻を優しく励ます夫の切ない心情を描いた表題作。かつて自らの家に住み込み、家事見習いをしていた女性と再会した医師の心の揺れを描いた「買い物籠」など、日常生活に潜む〈非日常〉を精緻な文体で描いた珠玉の九篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
67
吉村昭氏といえば「桜田門外の変」や「天狗争乱」、「戦艦武蔵」他長編の歴史文学が有名だ。しかし本書のような街中のごく普通の夫婦や男女を切り取ったような短編も面白い。絵で例えたらサラッと描いた淡彩画の世界。もう40年以上前の作品で話中の状況は一部古く感じるものもある。いまどきの男女はとよく聞かれるが男と女の関係は根本、昔からそれほど変るものではないと思った。どの話もすこしにがいブラックコーヒーの感じが好きだ。2016/11/28
ひなきち
27
大好きな吉村昭の短編集。ノンストップで読んだ。「帽子」といった身近な小道具を、文学作品に昇華させる手腕に…唸る。また、現代の社会問題にまつわる題材を描いており、先見の明を感じさせる。新妻に不審感を募らせる「牛乳」、不倫し子供を手放した女の心情を描いた「歩道橋」がよい。あ、途中で見方が変わる「踏切」も好き。日常にひそむ不穏な空気、違和感を体感することで、人間の複雑さを改めて認識できる。感情もそんな…単純なものじゃない。醜さを認めてくれているような気がするから、私は吉村文学が好きなのだ。2018/08/28
北之庄
6
色恋沙汰とは無縁な朴念仁の風情たる、吉村翁の短編集。一筋縄とは行かない、ややこしい事情を抱えた男女が各作品に登場します。いつもながら筆力は確かで、なかなかどうして読ませます。ただ、やはり彼の持ち味は、事実を丹念に取材した、史実をテーマとする作品に発揮されると思います。こちら方面は他に作家さんが沢山居ますね。2017/09/22
keiniku
4
「破獄」「羆嵐」「漂流」とは違って創作の短編集。吉村昭は長編・中編をじっくり読みたいと思うけど、この短編集でも上手いのは。負の感情。追い詰められる、嘘を隠している、勘繰る、欲望にかられる…… 背中にジワリ・ヒヤリとした感触が生まれる。 自分が生きてきた中での「やましさ」が思い出される一冊。「あのとき・このとき・そして今も」人って言っている事や行動に現れることとは違う事を常にやっているものだ。2018/09/08
どきん
3
「転」はどうくるかとページをめくったら「起」で終わっていたような短編、それが潔いような・・・2014/10/17
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