内容説明
私は風呂無しアパートに住む、高校の倫理教師。サチコが、突然アパートに押しかけてきた日から、私は堕ちはじめた。入浴料二千五百円、サービス料一万二千円の店で働く痩せたソープ嬢。手首には無数のためらい傷。2人の奇妙な共同生活の中で、セックスと暴力だけが加速していく。その果てにあるのは? 人間存在の深奥を見据えて深い感動をよぶ傑作小説。「笑い、怒り、おぞましさ……これほど感情を翻弄された小説は久しぶりです」と山田詠美氏激賞の、戦慄の芥川賞受賞作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
224
第129回(平成15年度上半期) 芥川賞受賞。 物語全体に漂う、どんよりと した鬱積感が芥川賞らしい。 主人公の高校教師の疲弊した 日々が読者をなぜか懐かしい 世界に誘う。それにしても、 血と肉と虫が舞っているような この描写は何なのだろうか。 女子高生酒井英子の無口さと 体を売るサチ子の饒舌さを 対比させながら…おぞましい 最後の破滅へと繋がっていく …堕ちていく、そんな話だった。 2014/03/16
てち
166
ハリガネムシ。カマキリに寄生する線状の生き物である。もちろん、寄生虫なので宿主がいなければ生きていけない。つまり、共存する必要がある。この小説の中でハリガネムシは、人間の中に巣食う醜さ、欲望、暴力といったマイナスなものを暗示している。そういった残酷な人間の本質を遺憾なく書き表した作品である。読むのにだいぶ嫌悪感を伴うが、純文学が好きな人には合うのかもしれない。2021/01/02
kaizen@名古屋de朝活読書会
148
芥川賞】らしい暗さ。人間とは何か、家族とは何かを問いかけていることだけは理解できた。著者の略歴を見ると、教員であることから、自叙伝かとも思った。常識的な考え方の薄さと、非常識な行動の薄さの鬩ぎ合いのようなうすら汚さを醸し出しているのかも。苦手。2014/08/01
R
78
誰にでも、抗えない欲望が眠っているのかもしれない。まるで自分ではないと思わされるそれが、じわじわと染み出してくる様が生々しくて、衝動というよりも、なぜか自然とそうしてしまうという破滅への傾き方が、そのうち自分にも降ってわきそうな怖さがあった。人間としてどうかと思うことばかりだけども、それが生々しく生きている様にも見えて、ノイズめいた傍観者の少女にも、ハリガネムシが巣食っているのかと思えた。2021/06/15
おいしゃん
64
【芥川賞作品】何の前情報もなく読んだのが失敗だった。血や肉の飛び出るようなシーンと性交のコラボの連続。たった130ページだが、吐き気を堪えながら、必死に読了。なんじゃこりゃ。2014/12/07