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内容説明
苦難の歴史を生き抜いてきたユダヤ民族には、スペインを中心に広がったセファルディと中東欧に暮らしたアシュケナージの二系統がある。本書は、蔑視や差別をかいくぐりながら、知識人・商人・弁護士・官僚などとして西欧社会の中枢で活躍したアシュケナージの群像を描き出すものである。ポグロムやホロコーストを逃れて米国に移住し、現代史に巨大な足跡を残したユダヤ人たちの出自や業績、交友関係を丹念に追う。
目次
現代のユダヤ人問題の綾
アシュケナージとセファルディ
教養主義の伝統
中東欧の革命と抵抗運動
ハプスブルク帝国崩壊
ワイマール共和国からナチズムへ
革命とホロコーストから逃れて
ロシアからの脱出
ニュー・ディール政策を支えたユダヤ知識人
アメリカの国際化
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
498
国を持たない民族、ユダヤ人。その歴史は迫害や差別と常に共存だった。筆者の見地から法学に携わった有名人を中心に語られるが、わたし自身かつて属した金融業界、不動産業界、トップを見れば常に彼らはそこにいた。娘の属する音楽業界(やハリウッドも)も同じく。築き上げた目に見える財産は後方に置いて移動せねばならなかった過去を思えば、目に見えない知識や才能という財産を伸ばさざるを得なかったのだろう。島国ではあるが、しっかり「ここは自分たちの土地」意識を持てる我ら日本人と究極のようだが、通じ合えるところは多そうだ。2022/10/09
skunk_c
59
ユダヤ人、とりわけアシュケナージで才覚溢れる人物を多数取り上げて紹介する。もちろん超有名人も取り上げているが、著者と知古のあった法学系の人物がかなり出てくる。エッセイ的なタッチでさらっと書いており、個人的な思い出話も多数挿入されているが、それが結構面白い。特にアメリカの大学の雰囲気が伝わってきた。やはりヨーロッパの方が荘厳というか重量感があり、アメリカは実学的でテンポの速さを感じた。こうしたユダヤ系のエリートを支える背景に、ディアスポラの経験や先祖を含めた過去の波瀾万丈が大きな影響を与えていたようだ。2025/02/27
佐島楓
15
ユダヤ人について、世界史的なアプローチから学ぶことができた。まさに流浪の民であった迫害の歴史、驚くほど優秀な人々の輩出、結果的に「不満のはけ口」とされてしまった現実。民族とはいったいなんだろう、と考えずにはいられない。非常に勉強になった。2012/09/07
こにいせ
6
ホロコースト・ポグロムから逃れて、新天地において(苦しみながらも)多様な分野に才能を開花させていくユダヤ人たちの姿を描く。日本人である私からは想像も出来ないくらい、ヨーロッパの各地では未だにユダヤ人差別の問題は残っているのだ。社会学をかじったものとしては、エーリッヒ・フロムやアドルノ、ホルクハイマーなど、ユダヤ系で第二次大戦期にアメリカに亡命した「フランクフルト学派」への言及がちょびっとだけというのが寂しかったり。2010/11/17
あくび虫
5
欧州が育み、または強制的に学ばせた諸々を、アメリカが丸ごと抱え込んだ…そんな印象を受けます。ホロコーストを逃れてやってきた彼らですが、アメリカでの差別だって洒落にならないわけですし、なんだかやりきれない。――ただ、この本で取り上げられているのはある程度の地位を確立した「エリート」たちですし、悲惨を感じるような内容はありません。ほとんど法学についての本ですね。2017/10/08
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- 和書
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