内容説明
灼熱の夏が永遠に続く国ベトナム。ホーチミンを訪れた「私」は夏の国の男に出会う。彼は綺麗な南の地獄そのものだった――。名前も素性も知らぬまま、ただ享楽的なセックスに溺れるふたり。――床惚れ――セックスがよくて惚れてしまうのは男女が堕ちる最も苦しい地獄と天国なのかもしれない。『ぼっけえ、きょうてえ』の著者がベトナムを舞台に狂おしくも甘美な情欲の世界を描いた官能ホラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
143
岩井志麻子さんが常夏の国ベトナムを舞台に描く幻想ホラー官能小説です。元芸能人の何とかガールズの成れの果ての女がベトナムに旅して白いホテルの部屋の前で出会ったホーチミンの男は運命の人だった。本書の2/3以上が男女の性行為の描写に費やされ延々と繰り返されておりまして、合間に夢か現か幻かという感じの亡霊を垣間見るヒロインの感覚描写が続いて行きます。イライラせずにゆったりとした時の流れに身を任せ日常を遠く離れた異国情緒と白昼夢の世界をひたすら味わって深く考えずに読んでいたら最後に2つのショックが貴方に訪れますよ。2019/08/29
リッツ
30
シマコ作品で異国の恋人との情愛が出てくると「チャイコイ」始め『ああ、お馴染みの』とつい思ってしまったがこれはホラー、あの世とこの世とのあわいが陽炎のようにゆれて…そして濃い死の影が夢から引き戻し目眩のようにラストへ。2014/05/23
manamuse
27
ベトナム好きなので読んだけど、読まない方がよかった。2020/05/31
🌸よーちゃん🌸
13
言葉遣いや文章、また官能シーンがとても艶っぽく美しくてとても惹かれた。けれど"彼"の存在には最初の方から予想出来ていて、明かされた時の衝撃はあまりなく寧ろ陳腐で落胆してしまった。また最後のオチがどうにも腑に落ちず…。私自身ホラーをあまり好まないのと、岩井志麻子先生が好きなのとで余計「なんだったのだろう」感が強かった。 #二コカド20202021/01/03
トラビス
11
表紙絵の鳥かごから飛びだつ鳥が印象的。主人公にとって男に借りてもらったマンションは鳥かごのようなもの、束縛や干渉に息苦しさを感じていたのだろう。2017/04/13