- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
本書は「不思議な本」である。丸山真男氏の『「文明論之概略」を読む』を引きながら、「日本研究」のあり方を論考した第四章「難病としての外国交際~『文明論之概略』考」を発表したのは昭和六十二年。第六章の「フェミニズムといふ病理」にいたっては、男女雇用機会均等法が盛んに議論されていた昭和五十九年の論文である。しかし、平成も十五年を数える現在、収録されているどの論文を読んでみても、一向に「古さ」が感じられない。そこが、実に不思議なのである。この不思議さを醸し出している理由はただ一つ、表題にもなっている「正義」について、そのほかの「外交交際」「ボーダーレスエコノミー」「フェミニズム」などについての論考が、その時の時流に流されず、軸がぶれることなく、著者の思考が一貫しているからである。副題を「反時代的考察」としは、著者の意図を表明といってよいだろう。時流に流されぬ論考。まさに文明論の王道を往く一冊だ。
目次
第1章 正義の喪失<br/>第2章 国際正義の罠―日本人にとつての湾岸戦争<br/>第3章 われわれの正義はどこに?<br/>第4章 難病としての外国交際―『文明論之概略』考<br/>第5章 ボーダーレス・エコノミー批判<br/>第6章 フェミニズムといふ病理
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
軍縮地球市民shinshin
8
経済の話以外は面白かった。長谷川氏の論考はどれも着眼点が独自で面白い。特にフェミニズム批判の最終章は秀逸。家庭内での主婦の労働をフェミニストはまったく認めないが、それはマルクス経済学の理論に立脚しているから。そこを長谷川氏は鋭く突いている。女性はずっと昔から家庭内で働いていた。外で働くのだけが労働ではないと。2016/01/26
うえ
4
「もともと、多国籍軍の「正義」の基盤となつてゐる近代の国際法といふものは、かつてのローマ法の伝統の上に、ギリシャの法思想とキリスト教神学が一体となつてでき上つてきたものであつて、それが実質的にヨーロッパ以外の地域に適用されるやうになつてからも、そのヨーロッパ文化の伝統に根ざした構造は根本的にくつがへされることがなかつた。或るイラク高官も言ふやうに、国際法の定める正義が唯一の正義なのではない。イラクの言ふ「正義」の内容が、他のイスラーム諸国の考へる正義と一致するか否かはまた別のこととしても」2015/08/30
めっかち
3
本自体20年前、論考は更にそれ以前のもの。然し、どうして今でも得られるものが少なくない。例えば長谷川先生のボーダーレスエコノミー批判。今のグローバリズム批判に照応するが、それらの遥か先を行っている。今の反グロの人たちの低レベルな新自由主義批判に比して、実に根底的に問題の本質を突く。やはりコロンブスまで遡らないとことの本質は解らないのだよね。2023/01/28
脳疣沼
1
著者の本は何冊か読んでいるが、やはり上手い。文章が上手いのか、話の運び方が上手いのか、とてもよくできた作品という感じがする。著者の意見に賛同はしないが、読んでいて痛快である。そういえば、著者は安倍首相の支持者だったはずだが、安倍内閣が女性の活躍する社会、もっと言えば一億総活躍を唱えていることに関して、どう思っているのだろうか?TPPなどで、よりグローバル化を推進しているのをどう思っているのだろうか?なかなか興味深いところだ。2015/10/29
MrO
1
どれも同感である。特に「フェミニズムという病理」は、常々、なんで子育てという、人間にとって最も本質的で崇高な仕事を片手間にして、経済活動などというほとんどどうでもいいようなことをしたがるのだろうと思っていたので、わが意を得たりだった。人類は、そろそろ資本主義に替わる仕組みを考え出さないと、絶滅にむけてまっしぐらに進んでいる感じだ。原発一つとっても、人類に何万年もの負債を残すあの凶器を止められないだけで、明らかに間違っているということだ。2015/08/03
-
- 電子書籍
- これがわたしの旦那さま4 レジーナブッ…