内容説明
若い編集者椎原典子は、女流作家村谷阿沙子の原稿催促に出向いた箱根で、顔見知りのフリーライターの変死にぶつかる。死者と村上女史に謎の繋がりを感じた典子と同僚崎野は、やがて女史には代作者がいたという確信を持つ。女史の夫と女中の相次ぐ失踪、女史の精神病院への逃避、そして第二の殺人と、事件は意外な方向へ発展する……。心理の微妙な起伏と情景の描写が光る推理長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨーコ・オクダ
38
編集者・典子と崎野が探偵役。通常業務の合間に調査する感じなので、事件の新たな展開に調査が追いつかず、後半まではスローペース。典子が担当する女流作家・村谷の盗作疑惑、ゲスなフリーライター・田倉の死亡、事情を知ってそうなキャラたちが次々と行方不明に…そして、探偵役ペアの上司である白井編集長が事件に関わってそうな気配もアリ。何とか集めた手がかりを元にたてた仮説を検証するため、箱根で危険な賭けに出る2人。そう、終盤からはスピードアップ!典子が崎野に腹を立てる場面が度々出てくるのは好みでないが、作品自体は好きw2019/06/24
坂城 弥生
34
最後の遺書が長いだけでなく、無念さが伝わってきた。2019/07/01
matsu04
29
ううむ、これはちょっと…。少し前の2時間モノのサスペンスドラマみたいな感じである。まあ全く面白くない訳でもないのでいいんだけれど。読むのに時間かかったなあ。(再読)2020/11/20
きょちょ
28
自殺と判断されたがどうも他殺らしい話から、もう1つの殺人事件と自殺が加わる。 関連する登場人物のほとんどがいなくなってしまう。 謎が謎を呼ぶが、600ページ以上の大作にもかかわらず、読者がしっかり謎解きができるほどの情報はあまりない。 清張の名作は、ごく普通の人間の感情や情緒や今までの人生がしっかり描かれるのだが、この作品は犯人の描写が少なく、従ってその辺りが描き切れていないのが残念。 その意味では「名作」とは言えないだろう。 ★★★ 2017/07/08
seacalf
28
大好きな箱根を舞台にした小説が読みたい。しかし、現代小説では案外見当たらないもので、やっと見つけたのがこの小説。しかも、初松本清張。でも箱根は小道具程度の扱いなので当てが外れてしまった。それよりも、時代を感じさせる言葉の数々、アベック、バスガール、交換手と時間制限付の電話、駅の電報取扱所などや、昭和のノスタルジック溢れる描写が、とても新鮮で面白みを感じた。サスペンス特有の推察に次ぐ推察がまどろっこしいが、クセがない文章なので時代が違う我々でもするする読める。ほう、これが松本清張さんなのですね。2017/04/17