文春文庫<br> 阿弥陀堂だより

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文春文庫
阿弥陀堂だより

  • 著者名:南木佳士
  • 価格 ¥550(本体¥500)
  • 文藝春秋(2016/05発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167545079
  • NDC分類:913.6

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内容説明

ようやく新人賞はもらったものの、執筆に行き詰まっている作家の孝夫は、医者である妻・美智子が心の病を得たのを機に、故郷の信州へ戻ることにした。山里の美しい村でふたりが出会ったのは、村人の霊を祀る「阿弥陀堂」に暮らすおうめ婆さん、そして難病とたたかっている明るい娘・小百合ちゃん。静かな時間と豊かな自然のなかで、ゆっくりと自分を回復してゆく二人が見つけたものとは……。極上の日本語で語られる、大人のためのおとぎ話。2002年秋、映画化原作!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

393
しっとりとした味わいの物語だ。この小説の美しさは、華麗でも壮大でもない。ひっそりとした山里の冬枯れた光景が持つような美しさだ。感情もまた大きく揺れ動くことはない。しかし、ページごとに絶えずさざ波のように寄せてくるそれは、いつしか全体として一つの塊のようになり、そこに読者に感情の存在を知らしめるのである。ささやかだが共感は深い。語られる言葉もまた作り上げられたものではない。作者の実感の中から拾い上げられてきたものなのだ。読み終わって、自分が読みたかったのはこういう小説だったのだと、しみじみ思える小説である。2015/05/23

❁かな❁

177
しみじみいいなぁと思える作品。芥川賞作家の南木さんの作品を読むのは初めて。作家として自信をなくしている孝夫。医師である妻、美智子は心の病を抱え2人で故郷の信州に帰る。豊かな自然とそこで出逢う素朴な人々との交流。次第に元気を取り戻していく。阿弥陀堂を守っているおうめ婆さん。質素に慎ましく暮らしている おうめさんの言葉やお人柄から学ぶことが多い。地に足をつけて感謝しながら生きる姿が眩しい。静かに淡々と大切なことを気づかせてくれる。ラストがとても素敵。人生を見つめ直すことができる温かい蘇生の物語。2020/02/09

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

177
信州の山里から上京した売れない作家の孝夫と、優秀な医師であるが故に心を壊してしまった妻美智子は、孝夫の故郷に戻り一から生活を立て直していく。 多分に自伝的要素のあるこの本には、著者自身が胸を打たれた言葉や思いがふんだんに盛り込まれていて、その都度深く胸を打ってくる。ただ「生きる」為に生きることの大切さ。色んな選択肢が目の前に広がって、無限に情報を手に取れる今、地に足をつけて生きることは難しい。「草いきれ、雨を予感させる湿気を含んだ風、背後に迫る緑濃い山。」泣きたくなるほど帰りたい。2018/11/28

zero1

161
こんな作品を読みたかった。【生きるのは奇跡】と知る作品。孝夫は医師の美智子と結婚したが、彼女は心の病を得て田舎で暮らすことに。この選択は成功し、病気は改善。阿弥陀堂を守る老婆、声が出ない難病の娘が物語の核に。地味だが美しい小説で静かな感動がある。特に美智子を励ます孝夫の言葉が胸に刺さった。加えて【小説とは何か】まで教えてくれる(後述)。レビュー219件とはもったいない。南木は完璧さを求めるあまり、うつ病の経験あり。「ダイヤモンドダスト」で芥川賞受賞。そのうち紹介したい。今年のベスト本候補として強く推薦!2019/12/26

新地学@児童書病発動中

134
作家と医師の夫婦が夫の故郷信州で、人間らしさを取り戻していく物語。不便でわびしい生活ながら、信州には人間を包み込んでくれるような自然の豊かさがあり、夫婦と同じように読者の心も和んでいく。90歳を超えた阿弥陀堂の管理人、おうめさんが魅力的な登場人物で、彼女の言葉には自然と共に懸命に生きてきた者だけが持つ知恵と温かさに溢れていると思った。斬新さはないが、しみじみとした情感を呼び起こしてくれる素晴らしい小説。2015/05/24

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