内容説明
拘置所内の「池袋通り魔」から届いた25通の手紙――。
「造田博教」を作りました」。
1999年9月8日、白昼の池袋で、包丁と金槌を手に、突如通行人に襲いかかり二人の女性の命を奪った《通り魔殺人犯》造田博は、逮捕後、友人にあてた手紙にそう書き記した。裁判を通じてほとんど何も語ろうとしなかった《通り魔》が、幾千万の言葉を費やして語ろうとする「造田博教」とは一体何なのか。オウム事件以降、「大阪池田小学校児童惨殺事件」へと続く、身勝手な無差別殺人事件の連鎖。《通り魔》から届いた二十五通の手紙をもとに、その背景にある現代の社会病理に迫る。
目次
第1章 宛名のない手紙
第2章 日本が嫌いな殺人者
第3章 『造田博教』誕生
第4章 誇大妄想
第5章 ひとりぼっちのテロ
第6章 独りカルト
第7章 判決
終章 繭の鼓動
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
澤水月
6
02年文庫書き下ろし。リーマン前の99年事件のためか「貧困は日本にないのに…」と書かれてるのが胸に残った。オウムから続き後の秋葉事件に繋がる家族の解体や自己愛の肥大が本件に詰まっているが…死刑囚なのに両親失踪のままとは。「造田博」教なる宗教(仮名と異様にこだわる)について繊細に気遣いつつ聞き取る著者の苦しさ。明らかに病気なので判決確定まで影響及ぼさぬようなぜ事件起こしたか核心に触れられず。だが造田の言葉は貴重な記録かと。本書は存在知らず驚き図書館借り。関係ないが林郁夫が死刑囚でないと改めて知り驚く、興味わ2014/05/13
うたまる
3
池袋通り魔殺人事件の死刑囚、造田博との文通録。被害に遭われた方には気の毒だが、これはどう見ても何らかの脳機能障害があるだろう。サヴァン的な記憶力や習慣への強いこだわり、随所に散見される未熟な思考性等から、おそらくは発達障害。そして、それに起因する二次障害も。送られてくる手紙に必ず挿入されているという定型句「この手紙は私の思ったことを適当に書いただけなので、深刻に考えないで下さい」は、著者が言うような責任からの逃避ではなく、からかいやいじめを受け続けた人生から学んだ悲しい自己防御の鎧だろうに。2014/12/26
ボンタンパンチ
2
池袋通り魔事件の犯人と著者が交わした手紙をまとめた本。犯人の真意には迫れていないと感じたが、やり取り自体は貴重なものだろう。2019/05/01
のんたん
1
なんという、育児放棄の恐ろしい末路!! この世で一番確実に得られるものであるはずの「親の愛」を感じられずに成長した子どもが辿る人生とは、程度の差はあれこのように寒々とするのかもしれない。親は必ず、子どもを愛するべきだ。強く、繰り返し抱きしめた上で。2008/07/20
まりん
1
事件現場に居合わせていて、あと少しのところで難を逃れた事件。すごく興味深かったが被告の手紙は怖いというよりつまらなかった。2008/06/17