内容説明
納会帰りに雀荘へ寄った4人のOLが、おしゃべりな男に包丁を突きつけられながら、延々と麻雀をする羽目に陥る表題作ほか、コミカルで、繊細で、温かく、ちょっぴり怖い4篇を収録した作品集。若者の日常に潜むいつもは見えない不安や心のほころび、性の揺れを優しくリリカルに描いた野間文芸新人賞受賞作。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
122
本書を読み終えて藤野さんの描く女達のメンタルの逞しさ・強さを実感しましたね。『BJ』ベビー・ジェーンと名付けた幽霊にいつも後ろ髪を引っぱられるので髪をスパッと切ったらスッキリと解決!夫は信じてくれないけど全然気にしない。『おしゃべり怪談』おしゃべりな異常者の男に包丁を突き付けられながら雀荘で麻雀の勝負を延々と続ける四人のOL。ヤスコは若気の至りでヌード写真を掲載して痛い目に遭った経験もあるけど危機に際し自分だけ逃げ出さずに耐え抜く天晴れな女性なのですね。題名の意味はショッキングなラストで漸くわかりますよ。2020/12/05
sin
39
誰もが自分だけの宇宙に住んでいて、通信手段は言葉だけなんだけどこれがまた伝わらなくて、結局自分で完結してしまっている。どの収録作品からもそんなメッセージが伝わってくるようだ。そしてそれらの作品に出てくる男たちは自分の理解の範囲内でしか相手をわかろうとせず意思疎通に及び腰だ(唯一、お姉ちゃんになったお兄ちゃんを除いて)。彼女たちが“愛”に対する渇望を無関心にすり替えるのは、そんな身勝手で幼い男たちのせいかもしれないし、自由という名の牢獄のような今の社会のせいなのかもしれない。2015/03/07
はらぺこ
25
短編集。自分には合わなかった。内容が理解できなかったって事じゃなくて、なんかよく分からなかった。2017/12/12
リトルリバー@中四国読メの会参加中
7
おもしろかった。ほとんど読んでいない作家さんだったので掘り出し物を発見した気分。くせの強い作品が多い芥川賞作のなかで、この作者の作品があまり印象に残っていなかったのは、きっとドライな文体のせいだろう。この短編集もたぶん今後の印象には残らないのだと思う。読んでる最中は確かに、ちょっと笑えてちょっと怖くて、淡々としたその温度感が妙にツボにはまったのに。どの作品もわかりやすいオチは描かれておらず、この続きはあなたの日常で、という感じ。良くも悪くも、退屈な小説、ではあるのかもしれない。2015/09/06
散歩いぬ
6
温度が低いというか、わざとフラットに作られた不条理小説。ズレ感のある「何かありげ」が散見されて、そこがクールでしょと言わんばかり。しかし最後まで読めたので嫌みばかりではなかったということかな。つくづくこういう本を楽しむには歳を取りすぎたと思う。2012/04/05