内容説明
日本SFの元祖・海野十三。理科系作家がその新しい知識を駆使して生み出す奇ッ怪で新鮮な物語に、昭和の科学少年たちは胸を躍らせた。赤外線、テレヴィジョン、超音波に電気風呂―。エログロ・ナンセンスにみちた初期の作品から戦時下の緊迫した空気を伝える異色作まで、鬼才が遺した多彩な推理小説を収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そうたそ
37
★★★★☆ 独特の世界観を堪能した。日本SFの元祖にして科学ミステリの創始者といっても過言ではないかもしれない海野十三。しかし知名度が低すぎる。もっと評価されてもいいのでは、とも思うが作品が一癖あるものばかりであるせいか。ミステリにリアリティを追及する気がさらさらないような内容はある意味では圧巻であるが、とにかくアイデアの面白さを突き詰めた結果のようなミステリは読んでいて楽しい。バカミスすれすれというようなものもあるが、それも含めて海野十三。乱歩の世界観が好きな人には自信を持っておすすめできる。2015/08/16
Kouro-hou
15
海野十三には三一書房から素晴らしい全集がでていますが、そこから漏れている希少作品も複数収録されているさらに素晴らしい本です。エログロユーモアミステリにSFと海野主要要素が満遍なくカバーされているのが良いです。特にシリーズ探偵帆村モノの「点眼器殺人事件」は全集未収録で伝説のバカミスとも言われるレア作品。何がスゴイってありえなさ過ぎるトリックな上にコレでは人が死なないw 海野の代表作である表題作に加え「『三人の双生児』の故郷に帰る」という作品舞台=海野自身の故郷の写真付き再訪レポが合わせて読めて、又感慨深い。2015/05/09
かわうそ
14
科学的な知識を活かしてSF的なアプローチで書かれた本格探偵小説を現代の目で読むと意図せざるバカミスに。「俘囚」、「振動魔」、掌編集「蝿」あたりがお気に入り。2014/01/25
不見木 叫
13
「電気風呂の怪死事件」、「爬虫館事件」、「点眼器殺人事件」、「俘囚」、「不思議なる空間断層」、「三人の双生児」が私的ベストです。2023/07/27
たいち
8
海野十三作品初読み。乱歩風な作品だと思い、乱歩を凌駕することはあるまい、と少し見下していたが、これはなかなかどうして面白いじゃないか!私の好きな怪奇ホラーミステリであり、その発想は斬新で奇抜、そしてシンプル。更にSF要素と確かな科学知識からくる文章に心奪われる。名探偵・帆村壮六が活躍する探偵小説シリーズも収録されており、濃厚な一冊なのは言うまでもない。何よりも驚いたのは、この人、私と同郷だ。素晴らしいものは案外自分のすぐ近くにあるのかもしれない。灯台下暗し、とはよく言ったものだ。2014/11/08