講談社文芸文庫<br> 補陀落渡海記 井上靖短篇名作集

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講談社文芸文庫
補陀落渡海記 井上靖短篇名作集

  • 著者名:井上靖【著】
  • 価格 ¥1,562(本体¥1,420)
  • 講談社(2014/05発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784061982345

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内容説明

熊野補陀落寺の代々の住職には、61歳の11月に観音浄土をめざし生きながら海に出て往生を願う渡海上人の慣わしがあった。周囲から追い詰められ、逃れられない。時を俟つ老いた住職金光坊の、死に向う恐怖と葛藤を記す表題作のほか「小磐梯」「グウドル氏の手套」「姨捨」「道」など、旺盛で多彩な創作活動を続けた著者が常に核としていた散文詩に隣接する人生の不可思議さ、奥深さを描く9篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

安南

28
老いや死についての短編集。夢や夢想で語られる物語は幻想譚のようにも感じる。『姥捨』想像のなかで主人公は母親を背負い姥捨山を彷徨う。捨て場所を探しながらの会話がおかしみがあり、また切なくもある。そんな二人を照らす月の光はきりきりと痛い。『補陀落渡海記』この伝承を知って以来、恐怖しながらも憧れのようなおもいを抱いてきた。今回表題作を初めて読む。大詰め、嵐のなかの船出、死の淵から救われて一安心と思いきや、暗転する冷徹なラスト。背筋が凍る。傑作といわれるのも頷けた。2013/06/21

21
「『救けてくれ』聞いた筈だったが、それは言葉として彼等の耳には届かなかった」ブラタモリの熊野特集で取り上げられていたので久しぶりに再読。61歳になると補陀落渡海をする習わしがあった補陀洛寺の住職である金光坊。死への恐怖、観音信仰を自らが傷つけるわけにはいかないという強迫観念。一度助かったのに、今度は明確に他者の手によって箱に釘打たれ、補陀落渡海させられちゃうのがしんどい。金光坊の死をもって補陀落渡海は区切りを迎える。自発的に死んでくれるなら続けるけど加害者になるのは嫌というのもエゴイズム。しんどい。2019/05/12

誰かのプリン

18
大和田和子の作品「補陀落山」を読んでから、井上靖も同じ様な作品があると知り読んだのが本書でした。 人間の奥底にある心理を上手く表現されている。「補陀落渡海記」他も心に残る作品です。2020/03/30

忽那惟次郎8世

16
熊野旅行の折に補陀落神社にてこの小説を教えてもらった。小説を読んで あの鬼ヶ崎で見た熊野灘の海 太平洋の黒い波を思い出した この小説の本質は「世間」と個人主義、同調圧力 そう言ったものをテーマにしているのではないか。実際補陀落神社の人は金剛坊を褒めていた。 世間の流れに抗したい 意をことにするのであれば もっと早くから意見表明し 工作し 周囲に違うんだよ ということを伝え 環境を作らねばならない これは我々の生活でもよくあることである。 他に明智光秀を素材にした「幽鬼」「楼蘭」も読んでいる、共に素晴らしい2020/10/31

三柴ゆよし

14
「補陀落渡海記」のみ読了。カミングアウトすると僕は補陀落渡海なるものにいつとは知れぬ昔から非常な恐怖を抱いてきた。棺のごとき形状の船に釘が打ち込まれる。彼人は瞑目して語らない。屈強な男たちの手で船は波に乗せられる。暴風の夜の海上、ひそやかな読経の声にはどこか法悦の響きが感ぜられる。怖すぎる。某読書家氏より春日武彦が挙げる後味悪い短篇ベスト3のひとつと聞いてトラウマ克服の意味も込めて読んでみた。恐怖はいや増すばかりであった。なんて性質の悪い小説だろう。これほど死ぬのが怖くなる小説は滅多にないと思う。いやだ。2011/11/04

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